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ルーツ
【女性向け 官能小説】

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ルーツU-2

今度は自分も会おう。と徹は言った。
そうね。とその場の流れで返事した。
それが、実際 三度目に会うことになる。

良子と私が彼らの云う駅まで出向くと柳井が迎えに来て
案内したのは徹の車だった。
内心、車に乗り込むのは抵抗があったし、何よりも徹が
180を越す長身で短髪コワオモテだったので気持ちの中では
後ずさりした。
不安だけど、ここまで来てしまっては断りづらい。
車で移動だなんて何の予定も聞いてなかったのだが
良子も一緒だし何とかなるだろうと覚悟を決めた。

車に乗り込むときに
「はじめまして」という私に
「はじめてじゃない」とだけ云った。
電話で話したのだからはじめましてではないと云いたいのだろう。
車中では、私と良子が後部座席でくだらないおしゃべりを
するだけで、柳井も徹も会話に気を遣う様子もなかった。
ただ ただ 私は良子とふざけて笑い合うのが精一杯だった。
どこに行くのか、連れて行かれるのか不安をごまかすために。

付いたところは病院だった。
仲間の自衛官が腹膜炎で入院しているという。
どうして、ナンパされた私が何の関わりもない病人を見舞うのか
徹の考えていることは理解できなかったが、抵抗もまたできずにいた。
しかし私はむしろ見舞いを楽しんだ。不思議な縁ではあるが
それこそ初対面の患者に
「早く元気になって、退院したら遊びに行こうね」などと
励ましたのだった。

病院から移動してファミレスで昼食をとった。
柳井が吸うタバコを見て「一本頂戴」と私も吸った。
未成年だったはずなので自分では持っていなかったのだ。
ただの好奇心。

その夕暮れからは柳井たちとナンパで出会った店に行った。
ラウンジのような広い間隔のボックス席と
当時で言うディスコのようなダンスフロアもある。
私は主にダンスに夢中で 飲んで食べては踊りに行った。
賑やかな音楽の中では会話など楽しむ雰囲気でなく
ビートに載せられてウズウズした体はじっと腰をすえてなど いられない。
徹はただ黙って座り、飲んでいるだけだった。
何が楽しいのか、私は自分が楽しむのに精一杯で徹の
話し相手になどと気を遣う気もまったくなかった。

一時休憩にボックスに戻り、飲み物で潤すとスグに私は
席を立とうと腰を上げた。
そんな私に徹は向かいのソファにもたれたまま手招きをした。
「何?」といっても聞こえないだろう、私は首をかしげて
そういう表情をして徹に近づいた。
「俺はお前をずっとみてたんだけど」
ゆっくりと、やや大きめの声で私の耳元に近づけて言う。
もともと寡黙っぽい男だと思っていたが、何を言い出すのか
私は懸命に聞き取ろうとした。
「お前、昼めしの時タバコ吸っただろ」
私は黙ってうなづく。返事のつもりか聞こえているという確認のつもりか。
「俺はあの時、お前のこと見んかったんやぞ」


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