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春に生まれた彼女へ
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恋のきっかけは突然に  〜桜舞い散る夜〜-2

「ほら、弥勒、これ水」

「ううう、朔〜俺、死んじゃう」

「そんなんじゃ死なないよ、ほら」

「朔、俺にも水を…」



「―あ、夕は大丈夫そう?」

「はい、私はそんなに飲んでないので」

「そう ま、このまま時間が経ったら、みんな復活するだろ」

やれやれ、と、望月さんは私の隣に座る。
私は思ったことを口にしてみた。


「あの、望月さんは、彼女とかいないんですか?」

「んー、今はいないかな」

「望月さん、後輩にもてているらしいですよ 望月ファンがいるとかいないとか」

「ははっ いるかいないか、どっち?」

「うーん、いる?」

「どうだろうね 僕は、そんな存在感じたこともないけれど」

「年下には興味なさそうですね」

「というか、恋愛自体にあまり…」

『興味がない?』

二人の声が重なる。
望月さんは、ふっと笑って、
「よく、そう言われる」 と言っていた。
誰に言われたのかな、弥勒さんかな。
でも、きっと彼女にはもっと優しいんだろうな、なんてそんな風に思っていた。





そして、私の誕生日をお祝いした日の夜。
亜紀さんの家で雑魚寝なんて、しょっちゅうだったし、いつもと同じように適当に眠っていた。
横にいた望月さんも、ぐっすり眠っていて、私もうとうとしていた。

だから、望月さんに、寝ぼけて抱き寄せられた時は、少しドキッとしてびっくりしたんだ。
ふわっと、柔軟剤の匂いがした。
びっくりはしたけれど、望月さんは、私のことを後輩としてしか、みていないはず。
そんなことは分かりきっていたから、深くは考えなかった。
―夜はまだ肌寒い。
全然嫌だと思わなかったし、あったかくて、最後には安心して眠ってしまっていた。



そんなことがあってからある日、偶然望月さんと、休憩をしていたとき。
ふいに身震いした私に、望月さんはそっと寄り添って、風から私を守るように座り直した。
距離が縮まったせいか、あの時と同じ望月さんの匂いがして、ふいに思い出した。
そのことを言ったときの望月さんの顔。
ヘっ?と目を丸くしていたっけ。

いつもあまり物事に動じない望月さんが、少し顔を赤らめてあたふたしているのを見て、なんだか私も、急に恥ずかしくなってきてしまったのだった。


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