光の風 〈回想篇〉後編-1
レプリカの涙も乾かないうちに話はまた戻ってしまった。戻したのは他ならぬカルサ自身だったが、彼にはまだ聞いておきたい、伝えなくてはいけない事があった。
「レプリカ、もう1つ聞きたい事がある。」
急な言葉に、もちろんレプリカは正しく反応する事が出来なかった。カルサは誰よりも早く真剣な表情に変わり、残された千羅とレプリカを一気に自分の方へ引き戻した。
「リュナが魔性の血を持っている事は知っているか?」
核心に触れた。
レプリカは震える手で口を覆い、信じられないと表情でカルサに訴える。
「いいえ。」
否定の声を出す。目が真実をカルサに求めていた。自然と体が前傾姿勢になる。
「本当ですか?」
長年共に過ごしてきて、そんな様子は少しも見られなかった。光の中で生き、他の人間となんら変わりなく過ごしてきたのに。ただ信じられない気持ちでいっぱいだった。
「だって、今まで。」
「一度封縛された時、遺伝子が目覚めたのかもしれない。それ以降リュナの体調がおかしくなった。」
レプリカの言葉を遮りカルサは可能性を告げた。
それが大きく響いたのであろう。レプリカの中にも思い当たる節がいくつか見つかり、苦々しい表情を浮かべた。
確かに彼女は光が溢れる天気の日は体調を崩し、曇りの日は反対に調子を戻していた。
「リュナ様の力が強くなったのは、本来のコンディションを得たからなのでしょうか。」
それはカルサの言葉を受け入れた上での言葉だった。
「そうかもしれないな。」
頭に浮かんだのはロワーヌと戦っているリュナの姿だった。確かにあの時の彼女は強く、戦士の名に相応しい程の戦い方だった。
今までの彼女は環明よりも力が弱く、戦士と呼ぶには難しい印象が強かった。攻撃よりも癒しの力の方が優れていたような気がする。環明の力がリュナに合わなかったのかもしれないと思う程だった。
「だとしたら、ウレイ様が父親という線はありません。」
リュナの出生について、長年疑問を持ち続けていたのであろう。レプリカは信じられないと拒否するのではなく、カルサの言葉を素直に受け入れた。それ程までに謎が多かった。
「セリナ様の過去は何も探るつもりはありませんでした。全てを捨て、新しくリュナ様として生きていく妨げにはしたくありません。」
今まではそうだった。どれだけ気になったとしても、それはもうセリナを封印しリュナとして生きるには関係がない事。だが今はそうも言っていられない。
「これからはリュナ様を守る為にも、全てを知る必要があります。」
レプリカの目はまっすぐカルサに向けられている。