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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉後編-2

「皇子、沙更陣様にお会い下さい。」

唐突な提案、しかも予期せぬ人物にカルサは眉をひそめた。あれからオフカルスには足を踏み入れていない。

「何故、沙更陣なんだ?」

「沙更陣様がリュナ様におっしゃった言葉が気になります。」

カルサは疑問符を表情にした。

レプリカが言うには、以前御剣の総本山に行った際のリュナの話に気になるところを見つけたようだった。いくら一番近い存在といえど、カルサの秘密をレプリカにも話さず、当たり障りのない程度に報告をしていたらしい。

どんな宮殿があって、国の様子がどんなものであったかの話を聞いている間にレプリカは総本山がオフカルスである事に気付いてしまった。特に決定打となったのは、あの人物の名前。全ての元凶とされ、世界を動かす歯車を回し続けている女性・玲蘭華。

「リュナ様は玲蘭華様にお会いした後、しばらく一人で宮殿の中を探索していたらしいです。」

自由気ままに建物の中を歩き回っていくと、中庭に繋がる扉を見つけた。外に出て目にしたのは色鮮やかに咲き誇る花壇だった。まるで絨毯のように広がる景色は自然とリュナを笑顔にさせる。

そのすぐ先には背の高い木々が円を描くように並び、その中だけ日陰になっている場所があった。この光り溢れる場所にぽつんと作られた日陰は、不思議と違和感もなく存在している。

よく目を凝らして見ると中に何かあるのが分かった。リュナは様子を伺いながら近づいていく。中の温度は日が当たらない分、少しひんやりとしていた。

まるで吸い寄せられるように中に入る。不思議とその空間は彼女にとって心地がよかった。中で守られるように咲く淡い水色の花は、当たり前のように目を奪う。

「誰かいるのか?」

入り口辺りから声がかかる。振り返ると沙更陣が中の様子を伺っているのが分かった。確かに目が合ったと思ったのに沙更陣の反応は鈍い。

外の光が強すぎて中はほとんど見えないのだろう。リュナから見た沙更陣も輝いて見えた。

「リュナ・ウィルサです。」

リュナは名乗りながら外へと向かった。

「失礼しました、何があるか気になったもので中に入ってしまいました。」

外に出て深々と頭を下げて謝罪をした。沙更陣は意外にも少し驚いたような表情をしていた。

「いや、構わないが。」

沙更陣の言葉に顔を上げ、表情で疑問符を投げかけた。沙更陣と目が合う。

次第に彼の顔つきは穏やかになり、優しい微笑みを浮かべた。それは明らかにリュナに向けたものだった。

「大きくなったな。」

意外な言葉がリュナに贈られる。

「私をご存じなのですか?」

正直な気持ちが口からこぼれる。

「あ、いや。幼い子が風神の称号を得たと聞いていたから。すまない。」

いえ、と答えつつも違和感が少し残った。沙更陣の目はまるで懐かしむように淋しそうでもあったからかもしれない。


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