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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉後編-18

「サルスが、ナルを殺したのか?」

カルサの言葉は風のようにその場を吹き抜けた。小さなざわめきが起こる。内に秘めておけない程のとまどいが声に、表情に出てしまう。誰もがナルに答えを望んだ。

「いいえ。」

願った通りの答えに一同は安堵のため息をもらした。

「サルスは私を攻撃しただけ。魔物を率いて、そして姿を消した。」

思わず貴未の足が一歩前に踏み出される。

「じゃあ、手紙にある通り?」

力ない声をだしたのは貴未、しかしカルサも同じ事を頭の中でナルに問い掛けていた。

ナルは視線を下げる事無く頷き、厳しい表情のまま口を開いた。

「サルスは魔物に寄生されているわ。」





置いてきた足を引き寄せる貴未の靴音が響く。

誰もが頭の中でナルの手紙の内容を読み返していた。









カルサ
貴方の下にこの手紙が行き渡る事を祈りながら
私は筆をとっています。

貴方がこれを読む頃、
おそらく私は誰かの手によってこの世から消え去っているでしょう。

私は占者としての禁忌を犯しました。それ故の罰なのだと、そう覚悟しています。どうか許して下さい。

未来を見ました。
自分の死に関わる未来を。
そこには燃える城、押し寄せる魔物達、倒れていく何人もの兵士、太古の王、神官、貴方達。
ほとんどの者が傷付き、叫んでいる。

燃える城の中にはサルスが立っていました。
魔物を操り、今まで見たことがない冷たく嘲笑うかのような目。
まるで魔物のような、深い闇のオーラをまとっていた。
あの子は魔物となってしまった。

カルサ、私が命を落とす戦いにサルスはきっと何か大きな変化を遂げる。
もしかしたらサルス自身、それに気付いていないのかもしれない。

裏切りの刀はサルス。
気を付けなさい、カルサ。

聖の事も、リュナの事もきっと貴方が心配するような事にはならない。

燃えた城の跡地に立つのは高らかに笑い声を上げるサルスパペルトよ。


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