崩壊〜結末〜-4
「その…ボクの父親はどんな人だったの?」
「素晴らしい人だったわ。私は今でも、彼を愛しているわ」
涼子は心を偽るが、そのことを仁志は見抜いた。
「だったら何故、涼子さんとボクを捨てたの?」
「彼には将来があったわ。そんな人に、私のエゴを押し付けるわけにはいかないわ」
「それは違うよ。本当に好きなら、すべてを捨てて涼子さんを取るはずだ」
「仁志。あなたが思うように、人は理屈だけじゃ生きられないのよ」
“好きになればすべてを許せる”
正論を唱える仁志に、涼子は否定の言葉で締めくくる。
「もう、この話は止めましょう。夜も遅いから、そろそろ帰りなさい」
「涼子さん。ボクは帰るつもりはないよ」
「な、なにを言い出すの!昨日も言ったでしょう」
許されない事を咎める凉子。しかし、仁志は思いの丈を吐き出した。
「だったら何で、ボクに裸を見せたの?何で息子のボクに愛撫の仕方を教えたの」
「それは…その……」
口ごもってしまった涼子。
「ボクは、涼子さんを好きなんだ」
「あ、あなた、何を…私達は親子なのよ」
「もちろん本気だよ。母親としてで無く、涼子さんとセックスしたい」
「そんなこと。まったくの悪い冗談だわ」
「冗談なんかじゃないよ。涼子さんと、ひとつになりたいんだ」
仁志の手が涼子の肩に触れた。
「もう、止まらないよ」
「止めなさい。昨夜も言ったでしょう」
肩に掛かる手を払い抜けようとするが、仁志は凉子に覆いかぶさる。
「イヤなら…イヤでも良いよ。オレはムリヤリでもやるから」
仁志の手が身体を拘束し、自由を奪う。凉子はテーブルに押し付けられた。
「凉子さん…」
「…うッ…」
仁志の口唇が凉子の口唇におおい被さる。初めて感じた柔らかさ。
「…ハァッ…凉子さんの口唇…柔らかいんだね…」
「…もう止めて…これ以上は…」
喘ぐような声で懇願する凉子。その目は憂いを帯ていた。
「凉子さんッ!」
「いやぁ…」
貪り付く仁志の口唇。テーブル上で交される、柔肌と服の擦れる音だけが聞こえる。
脳天を貫くような刺激を受け、腰のあたりがムズ痒くなる。凉子の腕から、次第に力が抜けていく。
「…りょ、凉子さん」
仁志の口唇が離れた。上から見下ろす凉子は、喘ぐような吐息に熱い目を向けている。
再び口唇が重なった。先ほどのように独りよがりでなく、凉子は受け入れた。
息子の口腔内に舌を入れて絡めようとする。初めてのことに、仁志は思わず身を起こす。