多分、救いのない話。-7--8
「お前、何処に行ってたんだ?」
しばらく落ち着き、話を聞きたいからとカフェに入ると、やはりその疑問が浮かんだ。
きつく言ったつもりはなかったが、神栖は気まずそうにミルクティのストローをくるくる廻す。
「むぅ。……秘密の場所なのです」
(秘密、ねぇ)
「皆心配したんだぞ」
「……申し訳ないのですよ。りぃやヒムカにメールするのが怖いですねぇ」
「安土も日向も心配してた。たっぷり怒られとけ」
「むぅ。先生、弁護してくださいなー」
「俺は弁護士じゃないしなあ」
同じ先生じゃないですかーとぷくぅと頬を膨らませる。どうも神栖と話すと中学生というより小学生を相手してる気分になるのだが、ほんわかした雰囲気でどうも怒る気がしなくなる。本当ならもっと叱るべきなのだろうが、今は仕事の時間じゃないと無理矢理理屈をつけた。
むにゅむにゅといつものふわふわした口調は、自然と葉月の心を和ませる。
「メグちゃん!?」
和んでいた時間が、唐突に切り裂かれた。
「ありゃ? みーちゃん先生?」
とてとてと、おぼつかない足取りで水瀬先生に近づく。その時、葉月はようやく気付いた。
(包帯?)
冬の厚着で隠されていたが、右手から両足から、もしかしたら店内に入っても取らなかったマフラーの下も。
(……!)
母親、なのだろうか。
「葉月先生……!」
「ほら、水瀬先生も心ぱ」
最後まで言うことは出来ず、水瀬先生に椅子から引っ張り上げられ、きょとんとする神栖を置いて店から連れて行かれた。
何なんだ、一体?