多分、救いのない話。-7--3
次の月曜日。雑務を終え、二人きりになれるのを見計らい、水瀬は葉月真司を問い詰めた。
「葉月先生」
「言えません」
何も言わずとも、分かっている。昨日の今日でそう簡単に激情が鎮まるわけはなかった。
しかし、それはこちらも同じだ。
「言えないで済む問題じゃないんですよ」
「……」
「何故言えないんですか?」
「約束しましたから」
「何を?」
「…………」
答える気はない。今のこの状況で、そんな勝手が許されると、本気で思っているのだろうか。
一体、何が彼をそこまで頑なにさせているのか。それはおそらく慈愛のみが知っていて、その慈愛は行方不明で、慈愛を捜す為には訊き出さないといけなくて、そんな堂々廻りに付き合うほど今の水瀬に余裕はない。
「一つだけ、答えてください」
相手の返事を待たず、水瀬は問うた。
「メグちゃんが行方不明になったことに、先生は関係してるんですか?」
「…………。……きっと、そうです」
「きっと?」
曖昧な言い方だった。だからと言って誤魔化した言い方でもない。
分かっていない。混乱している。故に、頑なに口を閉ざす。そんな印象。
葉月も、慈愛や彼女と同じ。全てを抱え込んで、一切を周りに語ろうとしない。
それはつまり、他人を信用していないのと同じだ。
「先せ」
更に言い募ろうとした時だった。ぶるるるるるとケータイが震える。
教員へ一斉送信されたメールだった。無論、葉月にも届いていた。
放課後、緊急の職員会議。
すぐにわかった。神栖慈愛の失踪に関してだ。