Summer〜君がくれたもの〜[咲弥編]-5
『firstkiss』
隣の子は完璧に俺を信用しきっている。出会って数時間なのに。なのに俺は・・・。ちょっとの拍子に欲望が理性を破ってしまいそうだった。といえば大げさかもしれない。ただ、思いっきり抱きしめてしまいそうだった。だから俺は、とりあえず何かせずにはいられなかった。だから、そっと立ち上がって、その場から離れた。
咲弥「光・・・。少なくなってきましたね」
悠木「公園。一休み・・・する?」
咲弥「そうですね」
適当なベンチに座りこむ。彼女はけっこう疲れていたらしい。それは表情で一発だった。
悠木「俺が携帯忘れてなきゃ・・・。ゴメン」
咲弥「ううん。私も忘れたんだ・・・。ここどこだかわかんないし。ハァ」
悠木「今日は厄日かな?」
咲弥「そんなことないですよ。少なくとも私は・・・」
悠木「なんで?」
咲弥「射的でいっぱい景品獲れたし。貴方に会えたから」
悠木「でも、俺に逢ったからこうなったのかもよ?」
咲弥「それはちょっと困りますね。・・・ん〜。悠木さん?家・・・帰らないとダメですか?」
悠木「いや?別に」
咲弥「じゃあ、今日は。一緒に居てくれますか?」
悠木「当たり前でしょ。君を置いて行くくらいなら死んだ方がマシさ」
咲弥「ありがとう・・・」
そう言うと、彼女は俺の肩にもたれて静かな寝息をたてた。やはり相当疲れていたのだ。精神的なものもあったかもしれない。俺は上着を彼女にも掛けてやると、自らもくるまった。
咲弥ちゃんは可愛い。寝顔なんて、もう見てるだけでオトされそうになる。彼女の肩に回した手に少しだけ力が入った。寝ようにも、彼女の寝息を聞きながら寝られる程俺はまだ人間できていない。俺はそっと立ち上がると、少し辺りを探し回った。燃えそうなものと木片を集めて、そっとライターで火をつけた。ついでに、煙草にも火をつけた。いつからか始めた煙草。やめる気にはなれそうにもなかった。
咲弥「ん・・・・え?」
すごく、不安だった。あの人が隣にいなかったから。でも、それは瞼をあければすぐになくなった不安。あの人は、まだ薄暗い公園の中で静かに火を見ていたから。
格好良かった。世間一般の価値観で見てもそう思える人。でも、それだけじゃなくって。もっと、違う何かを感じさせてくれる人。そんなの、初めてだった。
ずっと、火を焚いていてくれた?私のタメ?昨日逢ったばかりなのに。優しいとか、そういうのじゃない気がした。少しあの人が輝いて見えるのは、朝日のせいだけじゃないから。私はもう頭ではよく考えられなくなっていた。ただの感情の押しつけだったのかもしれない。それでも、あの人は受け入れてくれた。私を抱き返してくれた。優しく・・・・
悠木「起きた?どうせだったから、もう少し寝てても良かったのに」
彼女は目を擦ると、目を大きく見開いて俺の方をジッっと見ていた。俺もどうしていいかわからないから、ただ微笑んで彼女を見ていた。可愛い。というのとは、また別のような感情が俺の中に芽生えているのを、俺はその時はっきりと感じた。
彼女は立ち上がって抱きついてきた。俺はそのまま彼女を抱き返した。まだ薄暗い公園の中で、俺達は唇を重ねた。まるでドラマのワンシーンのように。長い間・・・