ラブベイビー-1
また今年もですか。
「今日は何の日でしょう?」
「は?知らねぇよ」
やっぱりな。こら、落ち込むな。想定内だったでしょ。
「よく考えてみ」
「あ?ん〜ゴミの日」
え〜、何でそれ出てくんの。5も3も全く関係ないのに、何であえてそれなの。
そんなんじゃ、まるでアタシがゴミみたいじゃないですか。
アタシの誕生日、あんたの中でゴミの日と化してるんですか。
「じゃなくてぇ」
誕生日だよ、誕生日。
言っとくけど、アタシ、誕生日の日にあんたから「おめでとう」言われたことないんだかんね。
「何、じゃあミミの日?」
だから3関係ないっての。
「違ぃがぁうぅ」
毎年毎年遅れやがって。
結婚もしたし今年こそはと思っていたのに。
「は?何だよ、じゃあ…あ、分かった」
お、まさか?
「海の日だ」
ですよねー。
とりあえずミの概念取り払え。
「海の日ね…」
「あーもー、何だよ、ハッキリ言えよ」
「ピンポーン、海の日でーす」
あんたなんて一生今日が海の日だと思い込め。そんで生き恥晒せばいいよ。
実際に海の日が来た時に焦ってのたうち回れ。そして自分の無知さを恥じれ。
バーカ。
「よっしゃー。やぁりぃ」
喜んでんじゃねーわよ、恥さらしが。
あんた、心の中ですげぇ笑われてんだかんね、はっはっは。
はぁ。
今年も切ない誕生日か。せめて今日の夜ご飯だけでも豪華にしてヒッソリ祝おっと。
「あ、この居酒屋俺入ってみたかったんだよな。今日の夜、ここで飯にしようぜ」
…あんた、どんだけアタシのこと嫌いなの?
「すいません、生中。あとモスコ、ジンバックとカミカゼ。熱燗一本と、梅酒ロックで。え?あ〜はい、いいです」
もうじゃんじゃん持ってきて下さいよ、オニーサン。
「一回でその量?生中で」
いいでしょ。誰かさんのせいで飲まなきゃやってらんねーのよ。
「しゃあせん、タコわさ!イカの塩辛も」
「…可愛げゼロだな。俺鶏から!」
何、タコわさ食べちゃダメなの!?塩辛この上なく美味しいですけど!?
あんたには頼まれたって食わせねーわ。でも、アタシはあんたの唐揚げ食べるけどね。