恋愛の神様・前編-1
男に女の気持ちが分かるわけない?
そりゃそうよね、その通りよ。でも分からなくていいからせめて考えてほしい。
あたしが月に一回どれだけ苦しんでいるのかを―――
爽やかな晴天の朝。
空は真っ青で、空気が澄んでいるおかげで遠くの山までよく見える。
なのに気分は絶不調。
あたしの頭上にだけ暗雲が立ち込めてるよう。
原因は、月一のアレ。
クソッ、下っ腹が痛い。
毎月の事ながら忌々しい生理痛め。
今17歳でしょ?と言う事は、あと数十年はこの痛みと付き合わなきゃいけないわけ?
少し前のめりになって学校までの道程を歩く途中、何度もよしよしとお腹を擦った。
容赦なく襲いかかる鈍痛を我慢してでも学校を休まない理由、それは簡単な事。
好きな人に会いたいからだ。
「祐希(ゆうき)…、お腹痛い」
「ふぅん」
「お腹痛い」
「ふぅん」
「お腹が痛いの!」
「知らねぇよ!!」
陽の当たる教室の窓際。一つの机を挟んで睨み合う姿はもはや月一の恒例になりつつある。
「彼女が苦しんでるのに心配じゃないの!?」
「心配してるって。腰も擦ってやったし温か〜いお茶も買ってやっただろ?」
「物じゃなくて!態度!!」
睨み付けると、今度はテキトーに頭をクシャクシャと撫で回してくる。
「可哀相にな〜、毎月大変だな〜、実果(みか)」
ムッカつく…
何、その軽い口調。全っ然心配してないじゃん。
イライラのせいか、痛みも心なしか増した気がする。
「あー…、お腹痛い」
「よしよし」
「下っ腹が冷えるよー、温めたいよー」
「脂肪がガードしてくれてんじゃん」
「あたしの脂肪は見た目よりずっと薄いの」
「じゃあカイロでも貼っとけよ」
「そんなもんない」
「じゃ、我慢だな」
「………バカ祐希」
「言われなくてもどうせ俺はバカですよ」
「童顔チビ」
「なっ」
「見た目は子供でも、せめて頭脳が大人だったらねぇ」
「脱いだら大人なんだからいいだろうが」
「あっち行け!!」
「はいはい。あー、男で良かった」
憎ったらしい―――
デリカシーのないバカ男。
あんな物言いしかできないわけ?ちょっとは心配してくれてもいいでしょ。
あたしは体調不良でも会いたいくらい好きなのに。
あたし達は恋人同士なのに…