恋愛の神様・前編-3
「恋愛の神様か…」
呟いて、ギュッとお守りを握り締めた。
祐希と出会って一年半。
付き合いだしてもうすぐ半年。
第一印象は、"子供みたいな奴"。
160cmのあたしとあまり変わらない目線。顔の作りも幼くて、初対面ではまず高校生に見られない。
見た目に負けないくらい中身も子供。すぐ人の揚げ足を取るし、あたしが躓いたりしたら心配もせずに指さしてゲラゲラ笑う。
当然甘い言葉なんか囁いてくれない。告白したのもあたしだし、――正直OKされるとは思ってなかったけど。
でもOKしてくれたんだから、もっと優しくしてくれてもいいんじゃない?いつもとは言わない、あたしがこうして苦しんでる時だけでいいから。
もし本当に恋愛の神様がいるのなら、あのバカをもっと女心の分かるできた人間にして下さい。
あたしの気持ちを分かってくれる、気の利く優しい―――
―それ、叶えてやるよ―
「……………ん?」
どこからか声が聞こえて、慌てて顔を上げたけど、誰もいない。
「気のせいか」
そう思い直して再び枕に顔を埋めた。
せっかく授業サボってるんだし、どうせなら暫く寝ちゃおう。
昼寝モードに入ったあたしの耳は、チャイムの音さえ子守歌に聞こえてしまう。
次に目を開けた時に世界がどうなっているのかなんて微塵も考えずに、日だまりの中に意識を手放した。
「…ぃ、おい、」
「んん〜?」
「起きろ!」
「んあ!?」
目を開けてまず視界に飛び込んで来た顔に、思わず眉をひそめた。
何で祐希じゃないの?
それよりこいつ…
「俺がいちゃ不服か」
「そりゃ祐希がいいよ」
「お前と祐希とこの八代(やしろ)で仲良し三人組だろうが!泣くぞ、俺!!」
そうだ、この男の名前は八代。あたしと祐希の間にいつの間にか入り込んで来た、邪魔な奴。