投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

恋愛の神様
【ファンタジー 恋愛小説】

恋愛の神様の最初へ 恋愛の神様 1 恋愛の神様 3 恋愛の神様の最後へ

恋愛の神様・前編-2

お昼休みになっても鈍痛は続いていた。
毎月本気で苦しんでるのに、祐希はあたしのこの状況に慣れてしまったんだろうか。心配してくれるどころか、教室にすらいない。
別に不思議な事じゃない。パン買いに行ったのかもしれないし、トイレかもしれない。
なのに今のあたしの気の滅入り方は尋常じゃなくて、祐希がそこにいないだけで泣きそうになってしまう。
女性ホルモンがどうだとか、そんな難しい事は分からない。何故か毎月生理痛と共にやって来る憂鬱に、今はぴっちり覆われている状態。

ねぇ、あたし祐希に会いたくて学校に来てるんだよ?
ほんのちょっとでいいから心配してよ。
あたしの事好きならもっと構ってよ。
一緒にいてよ。
彼氏らしく優しくしてよ。

「…くぅっ」

下腹を押さえ付けられたような鈍痛に、思わず声が漏れる。
駄目だ、限界。
心配してくれるのは女友達だけ。結局午後は保健室で過ごす事にした。



保健室に着いた時、携帯が低いうなり声をあげた。
メール、祐希から…もしかして心配してくれて――

『授業サボれていいなー。俺も生理痛になりてー』

無神経極まりない内容に顔が引きつる。
バカ祐希!
あたしは怒っているの。
調子が悪いの。
返信なんかするもんか。
怒りに任せてベッドに倒れ込んで天井を仰いだ。

「はぁ…」

学校なんか来るんじゃなかった。お腹痛いし、祐希は冷たいし。

制服のポケットに手を滑り込ませて中にあるモノを取り出した。

「所詮ただのお守りか」

それは『恋愛成就』と書かれたピンクの小さなお守り。
以前姪っ子の七五三について行った先の神社で買ったモノだ。



『実果、知ってる?』

着物を着てめかしこんだお姉ちゃんが愛娘のお祓いの最中に耳打ちする。

『ここね、縁結びの神社なんだって』
『へー…』
『恋愛の神様がいるらしいよ。お守りを身に着けてると願い事が叶うんだって』

…そーゆう事ね。
ほとんど部外者のあたしが何でこんな行事に誘われたのか疑問だった。
"縁結びの神社に連れて行く"
これは姉に会う度に彼氏の愚痴をこぼしていた妹への心遣いなんだろう。

『余計なお世話だよ』

…と言いつつ、"縁結び"という言葉はお祓いの最中ずっと頭の中に引っ掛かっていた。
その後、姉一家が写真撮影で盛り上がる中をこっそり抜け出してお守りが売られているスペースへ走った。が、

『これ…?』

一目見て脱力感に襲われる。
軽薄なピンク色にねつけの部分に付けられた安っぽい赤いハート型の鈴。見た目からは御利益があるとはとても思えない代物。
だけど―…
既に恋愛は成就しているものの、現状に満足ができない。
そんなあたしに残された道は神頼みくらい。
気がつけば吸い寄せられるように安物の量産品に手をつけていた。


恋愛の神様の最初へ 恋愛の神様 1 恋愛の神様 3 恋愛の神様の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前