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シアワセサガシ
【幼馴染 恋愛小説】

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シアワセサガシ-3

「はは、そうなんだ」

「…」

分かりやすいなぁと大聖は私を笑った。

「また変なこと言われた?」

「…」

水の音に混じって頭の中に声が響く。

『裏で遊んでそうだから…』

『キモチヨクならしてあげる…』

違うのに…。

「…そうなんだ」

汚れた唇をゴシゴシと擦る。
まだ、まだ、まだ取れない。

「奏、もういい。十分だろ」

「っぷぁ。まだなの、まだ…」

悲しそうに目を伏せる大聖にはもちろん気付かず、私はまた顔を洗おうとした。

「もういーの!」

「ぅわ!?」

目の前が急に真っ暗になった。
顔に当たるふわっとした繊維の感触。タオル?

「こっちおいで」

大聖の声が聞こえる。暗い中私は手を引っ張られ二、三歩脇にずれた。

「じっとしてろよ」

「ん」

いつもヘラヘラして掴めない大聖だけど、たまにしっかりと強く言葉を放つ時がある。それに私は小さい時からなぜか逆らえない。
大聖は「よしよし、偉い偉い」と言いながらわしゃわしゃと私の髪を拭いた。
思わず目を瞑る。
その後、顔の凹凸に応じてポンポンと優しく叩きながら水分を吸収していってくれた。
時たま大聖の手が顔に当たって、ジンジンしていた頬に気持ち良かった。
タオルごと頬を掌で包まれる。とても温かい。
たった数秒だけどゆっくり時間が流れてるみたいだった。

「よし、オッケー」

その言葉を合図に私は目を開けた。
目の前に現れた薄暗い廊下。それと、満足げに笑う大聖。

「奏、髪までびしょびしょなんだもん」

「…タオルありがとう」

大聖につられて私も笑う。

「汗吸いまくりの俺の部活用タオルだけどね」

そう言って、大聖は口許をにっと上げた。
悪戯っ子みたいな表情が小さい子供みたいで可愛いと思った。

「バカ」

「へへ。よし、奏も元気になったことだし一緒に帰ろうか」

「うん」

私は頷いて大聖の隣に並んだ。
大聖と一緒にいるだけでさっきまでの不快感は消えてしまっていた。
もしかしたら、大聖の汗と一緒に拭き取られたのかもしれない。


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