崩壊〜陥る〜-8
夕闇が迫る頃。ようやく見合いから解放された涼子が帰ってきた。
エレベーターを降り、自宅の方を見た彼女は最初、何があるのか分からなかった。
(何?……あの布の塊は…)
おそる々近づくと、それは人間がうずくまっている姿と確認した。さらに近づき、それが仁志だと分かると涼子は駆け寄っていた。
「ちょっと!仁志君、仁志!」
仁志は眠っていた。昨夜から一睡もしていないのと、空腹が重なり、いつの間にか眠っていたようだ。
「…ああ…涼子さん…おかえりなさい」
「おかえりじゃないでしょ!いつからここに居たの?」
仁志の青白い顔を見て、涼子はただごとでないと感じた。
「11時頃からかな?…腹も減ってるから、ついウトウトしちゃって」
「とにかく、中に入りなさい!」
「…それより、聞いてもらいたいことがあるんだ」
言葉の意味を、涼子は理解していなかった。
「分かったから!聞いてあげるから」
涼子は、仁志を招き入れてしまった。
…「崩壊」〜陥る〜完…