崩壊〜陥る〜-2
「だああっ!」
仁志は跳ねた。テーブルに足を掛け、涼子のそばへと宙を舞った。
「は、離して!イヤッ!」
仁志の両腕が涼子の動きを封じ込めた。テーブルに並んだ料理や調味料が床下へと散乱する。
押さえつけようとする力の凄まじいさに涼子は畏怖を感じた。
「オレは!…オレは!」
引き裂くような力でパジャマごとショーツを剥ぎ取った。
逃れようともがく中で体勢が変わり、お互いが向き合った。
「…イヤッ!ダメ、ダメなのよ!」
頑に拒否し続ける涼子。だが、覆いかぶさる仁志に両手の自由を奪われ、硬いペ〇スが花弁に触れている。
欲望に駆られた目。口許からは涎を流している。
そんな息子の姿を見た涼子は、抵抗を止めた。両手を仁志の腰にまわし、両足を身体に絡める。
「…うう…」
腰が動き、ペ〇スの先端が花弁を押し広げた。
「まって」
落ち着いた涼子の口調。思わず、仁志の動きが止まった。
「な、なんだよ、今さら…」
「ガスレンジ…このままじゃ黒焦げだわ。止めてくれる?」
「エッ…?」
仁志の動きが止み、後を振り向いた。その瞬間、上体を起こした涼子の右手が息子の頬を思い切り叩いた。
当然の仕打ちに、仁志は頬を押さえてヒザから崩れ落ちる。
「…ハァ…ふざけるのも…いい加減にしてちょうだい!私は、私は…」
“あなたの母親なのよ”
出そうになった言葉。涼子は喉の奥へとしまい込む。
強い衝撃を受けた仁志に、これ以上続ける意志は消えていた。
「ごめん…なさい…おかしくなって…どうかしてた」
戦意を無くした兵士のように、虚ろな目で許しを乞うた。
「とにかく、脱衣所に戻って身体を拭いて。パジャマを着てきなさい」
「うん…」
仁志は言葉に頷き、力の入らぬ身体で立ち上がると、ノロノロとバスルームを目指してキッチンを後にする。
「う…うう…」
悲惨な状況は嵐の後を思わせる。涼子は服を整えて、床に散乱した残骸に手を掛けた。
何故だか熱いモノがこみ上げた。犯されそうになった恨みか?違う。親子の名乗りが出来ないことに対してだ。
彼女は今さらながら、自らが若さ故に犯した罪の浅はかさにイヤ気がさした。