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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VE-7

───

 佳代がピッチング練習を初めて2週間を過ぎた。
 来週から期末テストのため部活は休みとなる。そのテスト前に行われる最後の練習試合で、一哉はブルペンに入っていた。
 立ち投げでキャッチボールを繰り返す。わずかの期間ながら、投球フォームは野手からピッチャーに変化出来ている。

(バラつきはあるが、スリー・クォーターもマスターしたようだな)

 1球々を受けながら、フォームやボールのキレをチェックする。

「ヨシ、行こうか」

 一哉はしゃがんでグラブを構えた。佳代は、今の自分が持つ精一杯でボールを投げた。
 真っ直ぐとスライダーを混じえての20球。バウンド球や逆球も何球かあったが、総じてまとまっているといえるレベルだ。

「この1週間で、ずいぶんと修正出来たな」

 受けた一哉の評価は、真っ直ぐは今すぐにも使えるがスライダーがまだ甘いと感じた。

「どうですか?藤野さん」

 ブルペンに永井が現れた。先発の直也より佳代が心配らしい。

「2試合とも使ってみましょう。4回まではライトで使って、5回の1イニングだけピッチャーで」
「2試合もですか?」
「ええ。今日で部活は休みになります。だから今日を逃すと次は2週間後になってしまう。
 それより、早く打者に慣れさせれば、次は余裕も出てくるでしょう」
「そういえば、澤田はピッチングのために試合から遠ざかってましたからね」

 永井は提言を受け入れた。
 一哉はボールを佳代に投げ返すと、

「聞いたとおりだ。2試合とも先発だからな、準備しとけよ」
「ライトはいいんですけど〜、ピッチャーが…」
「そんな難しい顔をするなよ。教えた事をやれば上手くいく」

 それは、野手として先発したピッチャーに対して言われたことだった。
 守備の際は、合間を見つけては腕を振って肩の準備をする。
 攻撃の時は、常にボールを握って指先の感覚を覚える。

「まあ、そうですけど」

 ピッチャーだけでも初めてなのに、その上、兼任でやらされる事が不安でたまらない。

(でも、久しぶりに試合で使ってもらえるし、ピッチングがダメなら監督やコーチも諦めてくれるかも…)

「分かりました。精一杯、プレイしてみます!」

 すぐにポジティブな考えに切り替え、気持ちを持ち直すとレギュラーの練習に加わって、守備と打撃の調整を繰り返す。

 すべての準備を終えた選手達はベンチ前に並んだ。

「それじゃオーダーを発表する」

 永井の言葉に神経が集中する。


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