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闇の重さ
【フェチ/マニア 官能小説】

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闇の重さ-2

 その日の夕方、母は真っ青な顔でやってきた。私がスーパーで万引きをしたのが見つかって、捕まってしまった日のことだ。必死に平謝りする母の姿に、私は卑屈だと感じた。「お母さん、こんなこと言うのも何なんですが」「何ですか?」。言いにくそうにしていた店長が母に言った。「手慣れているといいますか」「いえ、本当に、こんなこと初めてなんです」。
 母の懇願で私は何とか見逃してもらった。その帰り道、母は一言も口を利かない。まるで何かを心に秘めているみたいに。それが私には少し怖かった。でもその時には、まだ母の決意を知る由もなかった。

「S子、こっちへ来なさい!」。家に着くと、母は私を居間のソファに座らせた。「あなたのやったことは犯罪よ。今日はちょっと、痛い目に遭わせるから覚悟しなさい」「何言ってんだよ」。母に私を叱れるはずがない、そう私はまだ思い込んでいた。私は咄嗟に逃げ出そうとしたが母に捕まえられ、ソファに俯せにして押し倒された。母は私に覆い被さるようにしながら私の右腕を背中の方にねじり上げた。「痛ぇ、何すんだよ」。母にこんな力があったことに驚き、私は一瞬ひるんだ。すると母は私を俯せのまま抱きかかえて自分の膝の上に乗せ、スカートをまくると、私の下着を膝の上のあたりまで下ろしたのだ。それから私の腰のあたりをもう一度深く抱えると自分の体の方に引き寄せた。
 ピシャッ、ピシャッ。母は左手で私の背中を押さえつけながら、右手で私のお尻に平手打ちを始めた。ピシャッ、ピシャッ。私はずっと黙ったまま自分のお尻を母に差し出した。母の怒りはもっともだった。でも素直に謝る気にもなれない。母もただ黙々と私のお尻を打ち続けている。私のお尻を打つ音だけが部屋中に響き、私の耳にも飛び込んでくる。ピシャッ、ピシャッ。何十発ひっぱたかれただろう。母のお尻を打つ手が止まった。「もうわかったよ。もうやんないよ」。これでお仕置きは終わりだと思った。 
 しかし、それはつかの間の小休止に過ぎなかった。母は今度ははいていたスリッパの片方を脱ぐと、それを私のお尻に振り下ろし始めたのだ。ピシャッ。「痛ぇなあ」。いったいこのお仕置きがいつまで続くのか、私は不安になってきた。私には抵抗する気力はもう残っていなかった。それだけ母の迫力は凄まじかったのだ。お尻全体が熱く痺れてきた。母は何かに憑かれたように、ますます力を込めて私のお尻を打ち続けた。ピシャッ、ピシャッ。そして力を込めすぎたのだろう。次の瞬間、スリッパが母の手から離れて、宙を舞った。スリッパは明後日の方向に飛んで落ちた。
 それでも母は手を止めようとはしない。ブラウスの右袖をまくると、再び熟れきったりんごのような私のお尻に平手打ちを始めた。「今日という今日は、許しませんよ」。ピシャッ、ピシャッ。もう時間の感覚もない。朝からずっとお尻を叩かれ続けていたような気さえする。苦痛という感じではなかった。ただ身を任せていた。それが妙に心地よく、陶酔感のようなものさえ感じた。その時ふと、私のお尻に当たる母の手のひらが、死んだ母の手のひらのように思えてきた。確かに懐かしい感触がした。私は思考力がなくなり、いつしか譫言のようにつぶやいていた。「ママー、痛いよ−、ママー、ごめんなさい。ママー」。
 その時、音がやんだ。私のお尻をひたすら打ち続けていた母の手が、止まったのだ。次の瞬間、熱く腫れ上がった私のお尻に、冷たい滴のようなものが一滴落ちた。私にはまだそれが何だかわからない。一呼吸して、また滴がお尻に落ちた。私は理解した。それが母が落とした涙だったことを。
「お母さん」。私は俯せの姿勢のまま母に呼びかけた。「S子ちゃん、ごめんなさいね。こんなにひどくぶつつもりじゃなかったのに」「ううん、あたし、お母さんに、こんなに本気で叱られるなんて思ってなかったよ」「お尻、痛かったわよね」「うん、ちょっとね」。母は私を抱きしめてくれた。それは夢の中で闇に溶けていくいつものあの不確かな胸じゃない、正真正銘の母の胸がそこにあった。「お母さん、ありがとう」。私が言うと、母は一層強く私を抱きしめてくれた。

 母と私は久しぶりに二人で晩ご飯を作り、そして二人で食べた。ご飯を食べながら、私はふと、最近夢の中に死んだ母が出てくる話をした。その夜、私と母は前の母の仏壇に線香を供え、二人で手を合わせた。


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