僕らの関係 プロローグ きっかけ-4
「やめてよ、二人とも! 僕だって怒るよ!」
幸太は自分でも驚くぐらいに声を荒げた。
里奈と恵は目をパチクリとしばたかせ、お互い顔を見合す。
が……、
「や、やめてよー、りっちゃんも恵も酷いよ……」
恵に背後から羽交い絞めにされ、さらに抱え上げられる幸太。足を必死にばたつかせても、一向に解ける気配が無い。
「にひひ、悪い子にはオシオキしちゃうぞー」
「コウ、あたし達に逆らおうなんて十年早いぞ。っていうか、今さらそんなに恥ずかしがるなよな。昔は一緒にお風呂入ったり、お泊りしたろ?」
「それはそうだけどさ……」
幼稚園の頃は一緒にお風呂に入ったこともあり、四人の中で一人だけ付いていることをからかわれたりもしたが、それは第二次成長前の期間限定イベント。大人になりゆく部分を教室で見せるなどと、いかなる理由を差し引いても大問題だ。
「由香ちゃん……」
情けないと思いつつも再び彼女に助けを求める幸太。幾分常識的な彼女なら、放課後の男女の性の課外授業に待ったを掛けてくれるはず。
「二人とも……やめなよ……」
期待に反し、由香はかぼそい声でそう呟いたっきり、二人の行為を止めようとしない。それどころかだんだん前に歩み寄り、瞳を輝かせ始める。
「由香、これはあくまでも里奈のための授業なんだ。男に興味があるとか、そういうエッチな気持ちじゃないんだぞ?」
「そう? そっか……じゃあしょうがないね。幸太ちゃん、痛くならないと思うから、ちょっとの間我慢してね」
そういって由香は、いまだじたばたする彼の右足を抱きしめる。
「由香ちゃんまで……」
唯一味方だと思っていた由香にまで裏切られた幸太は、せめて泣き出さないように奥歯を強く噛む。
「さーさ、コータのアソコ、みちゃおっと……どれどれ……」
制服のズボン、チャックに里奈の手が触れる。ジジジと頼りない音を立てて引きずり降ろされ、最近特にいう事を聞かなくなったヤンチャ坊主が白い布越しに存在を主張する。
「ん……んー、コータのここ、オシッコの匂いするー」
「しょうがないでしょ、そういう場所なんだから」
「だって、漫画とかだと、もっといい匂いがするみたいだよ? コータの匂いがするーみたいにさ」
「そんなの漫画の読みすぎだよ」
「でも幸太ちゃん、不潔にしてるともしものときに困るから、オシッコした後も拭いておいたほうがいいよ」
「由香、もしものときってどんなときだよ?」
「それは、だって、そうじゃない……もう、幸太ちゃんが悪いんだからね」
顔を真っ赤にする由香は、あげあしをとったハズの恵ではなく幸太を責め始める。