僕らの関係 プロローグ きっかけ-13
「幸太ちゃんだって男の子だもん。しょうがないよ」
懸命にフォローしようとするものの、男子の性徴に詳しくない由香は同じ言葉をくりかえすだけ。あまりの語彙の少なさに自分を間抜けなオウムかと罵りたくなる。
「この前、皆が僕の家にきて夕飯食べて行ったでしょ」
先週の末、幸太の父親が急な出張で家を空けることになった。
母親も残業が長引き、夜遅くなるとのこと。それを聞きつけた恵が一人では寂しかろうとやってきた。もっとも、彼女の真の目的は食事の準備をしてもらうこと。
幸太はカレーをナベ二つ分作ることになったのだが、恵が分量を間違えたせいでナベ三つ分となり、急遽里奈と由香も呼ばれ、カレーパーティーとなった。
「幸太ちゃんのカレー美味しかったよ」
にんじんの嫌いな恵のために摩り下ろしてみたり、風味を出すためにローリエ、バジルなど耳なれない香味料を使ったりと、凝った作りだった。
「その後……」
おなか一杯食べたせいで動けなくなった四人は、暇つぶしにトランプをした。時計が七時を回る頃に解散しており、特におかしなことは無かった。
「掃除してたらさ、皆がいた場所、すごくいい匂いがして……それで……」
特に香水の類をつけているわけではない。ただ、スパイスの効いたカレーの持つ発汗作用でそれなりに汗をかいたのを覚えている。
皆学校帰りということもあり、スカートにニーソックス。大腿をにじむ汗はそのままクッションに吸われていた。
つまり彼は……。
クッションに顔を埋めて皮の剥け切れていない陰茎を扱く幸太。彼が身近な女子の名前を呼んで自分を慰めていた光景が脳裏に浮かぶ。
幼い顔立ちの幸太が欲情に突き動かされ、男根を弄る。先端から淫らな汁をこぼし、快感に嘶きながら残り香を吸う。
「しちゃったの?」
「ゴメンなさい」
「幸太ちゃん、キモチワルイ」
「ゴメン……」
由香が幸太に嫌悪感を覚えたのはこれが初めて。思わず眉を顰めてしまうものの、心の隅に、もう一つ疑問が芽生えていた。
「ね、イクとき、誰の名前を呼んだ?」
「……聞かないでよ」
「だって、知りたいもん」
「言いたくない」
「ダメ。教えないと里奈と恵にもばらすよ。そしたら二人とも、幸太ちゃんのこと嫌いになるかもね」
「……ずるい」
「だって、いけないことしたの、幸太ちゃんじゃない」
「うん……。あのね、由香ちゃんのこと。由香って叫んでた……僕」
白濁するものを吐き出しながら、自分の名前を呼ぶ幼馴染を想像すると、体が熱くなる。心臓の音がドクンドクンと脈打ち、鼻が詰まって息が苦しくなる。