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僕らの関係 プロローグ きっかけ
【学園物 官能小説】

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僕らの関係 プロローグ きっかけ-10

「恵……今日のお弁当だよ」

 だが、けっして目を合わせようとはしない。

「あ、ああ、ありがとう」

「それじゃね……」

「なんだよコウ。こっちで一緒に食おうぜ」

「そうだよー、皆で食べたほうが楽しいよー」

「僕、学祭の注意事項とか見ておきたいから」

 寂しそうに呟くと、幸太はそのまま席に戻る。

「それなら私も……」

 由香は去り際の彼に声をかけようとするが、昨日の言葉がまだ耳に残る。

『一人にしてよ』

 三人の女子に囲まれ、イタズラに弄られ、どうにもならない生理的反射をさせられる。結果的に快感を与えはしたものの、人としての尊厳を著しく傷つけた。

 ――イタズラが過ぎた。

 由香は謝ろうと何度も彼に電話をして、その度に無機質な着信拒否の音声を聞いた。
 今朝も里奈が仲直りのきっかけになればと由香と幸太を実行委員に推したのだが、逆にそれを口実に逃げられてしまった。

「ふい〜、コータ、完全にご機嫌斜めですー」

 良い手が浮かばない里奈はさっさとサジをなげ、手製のサンドイッチを頬張る。
 チーズとハムとレタスだけの質素な具を挟んでいるだけのそれは、恵が目の前にしている幸太お手製の色とりどりのお弁当に見劣りする。

「だいたいさ、コウだってだらしないんだよ。それに、ちっさいことを気にしすぎるんだよ。男ならもっとどーんと構えていればいいんだよ」

 良心の呵責に耐えかねた恵は、幸太を罵ることで平静を装う。

「……でも、コータのだし巻き卵、ちっさいことをしっかりしてるからおいしんだよねー」

 里奈はストローを卵に指し、ひょいと口に運ぶ。

「あ、それあたしの! 返せこのドロボー猫!」

「にひひー、もう食べちゃったもんねー!」

 もごもごと口を動かし、ごくりと音を立てて飲み込む。しかし、美味しいというわりに里奈の表情はどこかくらい。

「どうかしたの? 里奈」

「うん。やっぱり、ちょっちいつもより美味しくないもん」

 いつもなら「由香ちゃん、僕が……」「恵ったらまたピーマン残して……」「りっちゃん、また井口先生に怒られたの?」などと他愛の無い会話で過ごすはずのお昼休みも今日はやけに静か。三人はがっくりと肩を降ろし、ついでにため息も重なった。


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