エンジェル・ダストC-9
「何故、オレを襲った?」
「上官の命令だ…おまえを監視、盗聴し、あわよくば殺害しろと」
「なるほどねえ」
男の話に頷く恭一の手がポケットに伸びた。手にはスタンガンが握られている。
「約束が違う!オレは知ってることを喋ったぞ」
「誰が意識のあるまま解放すると言った」
男の身体に、再びスタンガンの電極が触れた。10万ボルトのパルス電流が駆け抜ける。
「がっ!…」
男は再び気を失った。
その時、クルマのトラップを解除した五島がオフィスに入って来た。
恭一は深々と頭を下げる。
「すまない。オレの認識の甘さのせいで、結局はおまえを巻き込んじまった」
そんな恭一を見て、五島は笑みを浮かべた。
「実はな、女とは別れた。おまえはアクションの最中でオレを頼って来た。
それを話すと、彼女は安全な生活を望んで“おまえとの縁を切れ”と言ったんだ。だから別れた」
恭一は苦笑いを浮かべた。
女が安定を望むのは当たり前のことだ。アクションを好む男には最初から無理な話なのだ。
「後悔しないのか?」
恭一が五島に訊ねる。
「当たり前だろう。おまえがやってるのに、オレは蚊帳の外じゃ悲し過ぎるぜ」
ニヤリと笑う五島。
「分かった…今日はオレのアパートに泊まれ。そして、明日からはおまえのドヤをベースに行動するぞ」
「血沸き肉踊る感覚…こんなのは久しぶりだぜ!」
恭一と五島。再びコンビを組んだ2人は、ガッチリと手を握った。
…「エンジェル・ダスト」C完…