『あたしのビョーキ』-21
「あんたこそ、一人で公園にきてんじゃん」
「あたしは受験生だもん。図書館の帰りよ」
「へー、じゃあさっさとかえって勉強でもしてなよ」
「うふふ、ふられたんでしょ」
「……そうですよ。その通りですよ」
しかも二連続だ。最悪だよ、まったく。
「まあしょうがないよね。あたし達って一般の人から見ると異常だもん」
「そうかもね。でも、人を好きになるって別に常識とか、そういうの必要ないって……今達って言わなかった?」
隣のブランコをキィキィ揺らす彼女はあたしの顔を見ず、ブランコを揺らす。
「ええ、言ったわ」
美雪は軽い調子で言うと、地面を蹴ってブランコを加速させる。
「美雪さんだっけ? 貴方もそうなの?」
無意味とわかっていてもあたしも地面を蹴り、美雪のあとを追う。
「んー、あたしの場合はちょっぴり違うかな。だって男の子が好きだもん」
振り子のようにすれ違いながらの会話は面倒だ。でもお互いの表情が見えない分、気楽だ。
「なんだよ。普通じゃん」
「違うよ。だって私の彼、小学生だもん」
小学生? いわゆるショタって奴? まあ、いい……のか?
「恵、その子のこと、好きだったの?」
あたしの疑問に気付いているくせに、美雪はさっさと次の話題を振ってくる。んでも、ショタの与太話を聞く気にもなれないし、別にいい。
「うんと……よくわからないや。だって、いきなり告られたんだし」
前々から可愛い子だと思ってた。でも、まさか自分を好きだとは思っても見なかった。だからだろうか、好きって言われた瞬間、やっちゃっていいように錯覚した。
「でも、嫌われちゃいました」
「がっつき過ぎたんじゃない?」
「そうかもしれません。つか、絶対そうです」
芳江に振られた後の埋め合わせ。そんな感じだったかもしれない。
それじゃあ嫌われてもしょうがないか。明日もっかい謝ろう。そんで許してもらえないならグッバイあたしを好きな人。それでいいや。
「でも、そういうの、誰にでもあるよ。ちょっとした気持ちの違いっていうか、勘違い」
「なんでそんなこと言えるんですか?」
せっかく人が覚悟決めたのに、どうして水を差すかな。
「私も一度、彼のこといやらしいって思って逃げちゃったから」
小学生がヤラシイ? へー、そうなんだ。なんかびっくりだな。あたしが子供んときは……由香のお尻触ってた。つまり人それぞれですな。