憂と聖と過去と未来 1-6
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「聖、今日はお昼一緒に食べない?」
「…ん、いいけど」
相変わらず眠そうな聖は曖昧に返事をする。
「ちゃんと聖の分もお弁当作ってきたから。忘れて買っちゃったとかなしだからね!」
「あー…わかった」
そんな会話を交わしながら登校した。
教室に入り、教科書を机に入れていると、佐山さんが声をかけてきた。
「柊さん」
「あ、おはよう」
「……篠塚くんに言ってくれた?」
佐山さんは不安げな顔であたしを見つめている。
「…今日の昼休みに言うつもり」
「そうなんだ…あ…」
佐山さんの視線の先には二つの包み。
机に並べたお弁当箱だった。
「それ…篠塚くんの分なんだ…いつも作ってるの?」
「…毎日じゃないけど、たまにね」
佐山さんは見るからに落ち込んでいるため、多少気まずくなりつつそう答えた。
「……そっか、そうなんだ…あ、じゃあお願いね」
予鈴が鳴ったので、佐山さんは席に戻った。
なんだかやりにくいな…
そんな違和感を感じながら、あたしも授業の準備に取りかかった。
***
チャイムと同時にあたしはお弁当箱を二つ持って中庭に向かった。
二人でご飯を食べるときは、あたしがお弁当役で先に中庭の場所とり。
そして聖が飲み物を買ってくるという、いつの間にかできた決まりがあった。
数分して、聖がやってくる。
手には牛乳パックと緑茶のペットボトル。
言うまでもなく、あたしは緑茶。
聖は毎日三食ご飯に牛乳という、変わった食生活をしている。
まあ牛乳ばかり飲んでるからでかいのかもしれないけど。
「ありがと」
「……ああ」
聖にお弁当を渡すと、心なしかうれしそうに蓋を開けて食べ始めた。
「……」
やはり言い出せない。
あたしは恋の仲介役なんてしたことがないし。
なんて切り出したらいいんだろう…
「憂」
「へ?」
聖はあっという間にお弁当を食べ終えていた。
その切れ長の目はあたしを見ている。
「なにか用があるんだろう」
「……」
「…昨日からおかしいからな。言えよ」
聖から話を振ってくれた。
ここは乗らせてもらうしかない。
勇気を出せ、あたし。