憂と聖と過去と未来 1-4
***
三年になって一ヶ月が過ぎた頃だった。
「…あの、柊さん」
トイレで偶然会った佐山さんが話しかけてきた。
もうすっかり新しいグループが出来上がっていたので、もうほとんど会話をすることはなかったが、なにか用があるのだろうか。
「なに?」
「あの…聞きたいことがあるんだけど」
「うん」
佐山さんは言いにくそうにしている。
大人しい性格が災いしてか、こういうことにはなれていないようだ。
それともよほど無理な質問を投げかけようとしているのか。
「柊さんって篠原くんと付き合ってるの?」
「え…?」
たしかに言いにくかっただろう。
大人しい佐山さんがそんな話を振ってくるなんて思いもしなかった。
「ごめんね、こんなこと聞いて」
「んーん…えっと、なんて言ったらいいのかな」
あたしは聖と幼なじみだということを始め、聖との関係を話した。
「…つまり、柊さんと篠原くんは付き合ってないってこと?」
「うん」
「…そうなんだ」
「…」
正直、なんとも言えなかった。
「柊さん」
「なに?」
「私、篠原くんが好きなの…協力してくれないかな…」
「……え」
一瞬、頭の中ではノーの文字。
あたしは聖との時間をとられたくない。
「お願い!一年のときからずっと好きだったの…」
好きだった…?
ずっと…?
そのとき、少なからずあたしの体には衝撃が走ったと思う。
「うん…」
結局、あたしが出した答えはイエスだった。