アルエ-1
ハートに巻いた包帯を僕がゆっくりほどくから…
あたしの名前は三村香苗(みむらかなえ)。
只今電車通学中。MDウォークマンからは,アルエってゆう歌が流れてる。
あたしはこの歌が1番好きなんだ。だって…
「あの…すごい音漏れしててうるさいんすけど。」
『ぇ!?あ…すいま…って和樹!!!!』
「ハハッ☆今知らない人に注意されたと思っただろ〜」
『バカッッ!!』
━━こいつの名前は島和樹(しまかずき)。
調子よくて何かといっちゃあたしに絡んでくる奴。
だけどあたしは…こいつが好き。
「何聞いてんの??」
『和樹から借りたアルエだよ』
「マジ!?超いい曲だよな☆俺にも聞かせろよ〜」
…うゎっ。
あたしの耳と和樹の耳が触れる。ドキドキが聞こえちゃう…
『バカ!!!』
電車は学校の最寄り駅についた。
和樹がびっくりした顔でこっちを見る。
あたしはわざとシカトして,駅の階段をあがる。
「おいバカ。何で怒ってんだよ。」
……あたしの気持ち知らないくせに。
「おいって!!」
そりゃそうだよね…だって和樹には…
あたしは振り向いた。
『彼女に見られて誤解されたら嫌だから☆バ〜カ』
あたしはわざと明るく言った。今の…不自然じゃなかったよね??
「あ,そっか☆」
あ,そっか☆…じゃねぇよ。ホント…バカ…
楽しい時間は終わり。駅には和樹の彼女が待ってる。
「和樹〜☆」
「お〜っ,綾乃!!」
何もなかったかのように和樹はあたしを追い越す。
そして彼女と肩を並べて歩きだす。
ハートに巻いた包帯を僕がゆっくりほどくから…
ねぇ。和樹はあたしの包帯はほどいてくれないの??
固く縛られた包帯を…
和樹は…あの子の包帯しかほどかないの??
いつの間にかあたしの目からは涙が溢れていた。
悲しい時は目の前で大声だして泣いてよ
そんな寒いとこ今すぐでておいで…アルエ
━━今のあたしは,和樹の目の前で泣く事も許されない…
━━━FIN━━━