ある季節の物語(冬)-2
結婚して三年…私はアキヒコとの体の関係が醒めているとは思わなかった。私はアキヒコに愛さ
れていた。私は少なくともそう思っていた。
アキヒコは、いつもその小麦色に焼けた厚い胸で私を熱く抱いてくれた。優しいキスをして、私
の乳房を大胆にその大きな手で揉みしだき、潤んだ唇で激しく私の肌を愛撫をしてくれる。
太くたくましい健康的な彼のペ○スが私の中に挿入され射精される…ねばりを持った白濁液が、
アキヒコの体温を伝えるように私の子宮の襞を這い上がってくる…。
でも、ただそれだけのことだった…。
アキヒコの温かい精液が私の中を充たし、それはやがていつの間にか冷め、私の中の淫液に薄く
溶けていく…。
私とアキヒコとの関係はそれ以上にも、それ以下にもならなかった…。それはケイコの視線を
背中に受けることがなくなったあの頃からだった…
久しぶりにケイコと会って以来、私たちはあの冬の公園のカフェで何度か会った。
その日、私はケイコに雰囲気のいいカクテルバーがあるからと行かないかと誘われた。
…ごめんなさい、今日は私の誕生日なので、夜はアキヒコとホテルで食事するの…
ええ、そうなのよ…そのあとホテルに泊まることになっているわ…
嘘だった…
ただ、私はケイコにそう言ってみたかっただけだった…コーヒーカップに唇を寄せ、私は上目づ
かいにケイコを覗き込む。わずかにケイコの頬が強ばるのを私は見逃さなかった。
…アキヒコのあれって、すごく感じるの…と、私は何気なくケイコに囁く。
違う…
夫のアキヒコとのセックスにもどかしさを覚えるようになったは、いつ頃からだろうか。
結婚して月日が流れ、少しずつ潤みを失う私の性器…鬱屈したような何かが、膣襞の粘膜に渇い
た瘡蓋の貼りついていた。
そしてあの日のカフェでケイコと会っていたとき、化粧室に行くために彼女が席をはずしたとき
だった。彼女の椅子の足元に置いたデパートの紙袋の中にのぞいた黒々とした縄の束…
そして、それに混在するように無造作に絡まった蝋燭や革の鞭…
一瞬、私はそれがどういうことか理解できなかった。