Letters2〜ビール瓶に託した手紙〜-1
「私を返して下さい」
ただ、一文。
近くにあったチラシの裏に書いて、寝ている父さんが飲んでいた
ビール瓶に入れた。
母さんは、父さんの暴力に
耐え兼ねて、家を出た。
私は置いてきぼり。
母さんが出ていった後は私の番。
体は傷だらけ、心は壊れた。
何もいらない。
誰も信じない。
だから、自分だけは
返して欲しい。
ビール瓶を振りかざし、割れた。
痛みは感じた。
十分過ぎるほど。
憎いはずなのに。
足元に血が這ってきて
父さんの手が私の足首を掴んだ。
私はもう一度叫ぶ。
“私を返して”
手紙が血に染まり始めた。