『久遠の絆~現代〜平安編~』-3
〜宿命への誘い〜
放課後、俺は栞に『オカ研』に来て、天野先輩に夢見をしてもらうように言われる。
俺はその申し出を一度は断ったものの、万葉の説得もあり、ついに決心を固めて部室へと向かった。
『やっと来てくれたのね、待ってたわ』
部室に入るなり、天野先輩が俺を出迎えてくれた。
『話は聞いているわ、早速始めましょ』
不思議な形をした器が置かれた机の前に座らせられる。
『その器に意識を集中して……』
言われた通りに、意識を器に集中させる
刹那、意識が遠退いていく……。
〜千年の始まり〜
……鹿を追って入った森の奥。ひっそりと広がる碧い泉から現れた女は、一糸まとわぬ姿で岸へと上がる。
神秘的なその姿に心を奪われていた俺は、無意識に小枝を踏み、辺りを包んでいた静寂を破る。
彼女は咄嗟にこちらに気付き、眉をひそめた。
『鹿を追って森を進むうちに、偶然ここに……』
俺はしどろもどろになって言い訳をしつつも、彼女の裸身から目を離せずにいた。
その時、不意に茂みの中から雌鹿が現れ、彼女の元に身を寄せる。
鹿は彼女の友達だと言う。
彼女は、俺が狩りでその鹿に怪我をおわせたことを非難し、あげく朝廷批判まで始めた。
貴族さながらの豊富な知性を持ちながらも、貴族とは思えぬ言動。
俺は彼女の正体に興味を持った。
頭の中を色々な憶測が飛ぶ。
しかし……
『もうここには来ないで』
彼女は俺に向かって言い放つと、森の外れへと消えた。
俺はあやかしにたぶらかされた心持ちのまま、その場に立ちすくんでいた。