桜が咲く頃-3
拒絶…?
胸が痛い…
目の前が暗くなる…
不安が、よぎる…
俺は、ずっと抱いていた不安を彼女にぶつける。
『教えてくれないか?
家を出て行った理由…』
彼女の体がビクッとする。
俺は、不安を形にする。
『俺のこと、嫌いだから…?
俺の気持ちに答えられないから、出て行ったのか?』
彼女は何も答えない。
俺は更に続ける。
『俺は鈴に会いたくて会いたくて会いたくて…ずっと捜してた。
でもそう思っていたのは俺だけで、鈴は…』
俺は涙で言葉が詰る。
でも必死に続ける。
精一杯の気持ちを…
『それでもいいんだ。
それならそうと、はっきり言って欲しい…
はっきり、嫌いだと…』
本当はずっと不安だった。
嫌われたんだと思った。
それでも、鈴の口からはっきり聞くまでは諦められなくて…
『…ちがうんだ…』
震える声でかすかに聞こえた彼女の言葉。
『そうじゃなくて…』
彼女は泣きながら少しずつ話し出す。
『矮助は、いつも優しくて…
矮助専属の護衛は私しかいなかったのに、矮助は仕事で出掛けるとき、いつも私を連れていかなかった。
それは、いざというとき私が傷つかないようにするためだろ?』
その通りだった。
俺は何も返せず黙ってしまう。
彼女は続ける。
『矮助は、そうやっていつも私を守ってくれた。
矮助の優しさに包まれて、私は幸せだった。
私は、甘えてしまった…
私は矮助の優しさに甘えて、寄りかかって…
このままでは、矮助を潰してしまうと思った…
矮助が私を支えてくれたように、私も矮助を支えたい。
寄りかかるだけじゃなくて、寄りかかって欲しい。
私は矮助を支えられる、矮助を優しく包んであげられる、力が、強さが、欲しかった…
矮助の隣を、並んで歩けるように…
矮助に似合う、女の子になりたかった…』
『え?それは…』
どういう意味…?
と続けたかった俺を、彼女はまっすぐ見つめ
『矮助が好き』
俺は目を見開く。