見返りは君でイタダキマス〜second(前編)〜-1
付き合うようになってからの楓は相変わらずナマイキで、口は達者だし、特別甘ったるい態度なんてなーいない。
しない。
接し方にも態度にもぜーんぜん変わりない。
楓自身は何も………本当になんっにも変わってない!……はずなのに
なのに…全然ちがう。
私が自覚すればするほど、本当に…すべてが優しくて愛しいばかり
……昔は『可愛いトコあるじゃん』なーんて上から目線に思ってた仕草や行動にすらドキドキして……心臓やられそう
今までの誰より私を思ってくれる
……私を、…私の気持ちが自分に向くのを、待っていた
その言葉が嘘偽りなく本当だったんだって思い知るばかり
楓は、……優しい
自覚するたび今までの誰より恋しく思う
どうしようもないくらい…気持ちが暖かくなってきゅうって胸が締めつけられてドキドキうるさくなる
……心臓…壊れちゃいそう
そのくらい幸せ。
幸せすぎる――だけど、困ったことがひとつ。
それは――、わたしが――
「ミカー、ほらご褒美」
ちょーだーい。
と小首を傾げてねだってくる楓クン。
「……目、閉じなきゃあげない」
「ハーイハイ」
ばくばくウルサイ心臓をぎゅっと押し込めて、楓の頬に手のひらを添える。
瞼を下ろした楓は眠っているみたいで、無抵抗にこれからされることも知らないように無垢な顔でただ待っている。
やだ、なんかイケナイコト……っていうか寝込み襲ってるみたい……
「まだ?」
「今、する…から」
じれったいのか請われる声に掠れた声で返事をして………頬の手はそのままに顔を近づける。
唇を合わせる直前で目を閉じた。
触れるだけのキス、舌はいれない。
楓との約束だった。
『歯止めがきかなくなるから――あんま煽んないで』
つっけんどんに言われるソレは100%私のための言葉で、じんわりする目を必死で張りつませて頷くしかできなかった。