見返りは君でイタダキマス〜second(前編)〜-2
ふにふに、と楓から唇を食まれてペロッと舐め上げらチュッと軽いリップ音が鳴ればおしまい。
「ん。……じゃ、もう少しやるから。あ、おかわりいる?」
参考書を捲って息を吐いた楓は、私が頷くとちょっと笑って、カップ片手に部屋をでていった。
ハァ…。
いなくなった途端気が緩んで息が盛大に漏れた。
正直、おあずけ気分なのは私だなんて、――言えっこない。
『この関係がおおっぴらになれば、後ろ指さされたり責められるのは、絶対ミカの方が多いんだよ』
『おばさんたち驚いちゃうね』
付き合い始めてすぐ、――玄関前でひと泣きしたあとそう笑った私に、楓は今にも泣きそうな…それでいて怒ったような声で、私を抱きしめながら……絞り出すようにそう言った。
―みないフリをしたかった
だから…わからないフリをしてた。
理想だったくらいだもの――自慢したいくらい素敵な、私の恋しい楓。
たった一人の恋人。
私だけの愛しい恋しい楓。
でもそうしたって……私に待ってるのは『コドモをたぶらかしたオトナ』とか『若い子を弄ぶオンナ』とか……まるで傷つけるだけにあるような言葉だけなんだって。
………楓の方がよっぽどわかってた。
――だから楓は優しく待つしかできなかったのかもしれない
今の楓の気持ちを、真剣だなんて誰も思わない。
私がそそのかして熱をあげてるくらいにしか――きっと思ってくれない。
『早く、ふさわしくなるから……待ってて』
そんな風に優しいお願いをされたら、私は待つしかない。
楓は、もうずっと昔から私を待っててくれたんだから。
私だけが待てないなんて言えない。
「好きって、こんなんだっけ……初めて…こんなの」
今だって心臓がドキドキしてる。
プラトニックな関係、何ら変わりないままの私たちにもお付き合いの約束はある。
一つはさっきの『キスに舌は入れない』。
まあ…清い仲でいましょう、みたいな。
もうひとつ『ご褒美のキスは私からする』。
『勉強あとにご褒美』っていうのは前からなんかしらあったんだけど、キスなんて付き合ってからだ。
もちろん。