卒業-1
中学から連れ添ったマブダチ、トモ。高校で同じクラスになったサコシタ。そんで俺、シュウ。
三人なら怖いもんなんて無かった。
三人だと俺らは無敵だった。
三人が世界の中心かと思うくらい毎日が楽しかった。愛を叫ぶならここで叫べと笑っていた。
狭い学校とかうわべだけの社会とか俺らには関係なくて、センセーもセンパイもガッコーも俺らにとって遊具みたいなもんだった。
別にグレてるとかそんなんじゃなく、最低限のオベンキョはしたし、赤点もギリギリ免れてた。
勉学よりも遊びに全力を注いだだけ。
辛いことなんか見向きもしない、楽しいことだけ人一倍頑張った。
そしたらセンセーたちは目頭立てて追いかけてきたっけ。
三人一緒だから追いかけるのも楽だったろう。
それすら楽しくて何度も何度も繰り返した。
俺らはずっと無敵だと思ってた。
ずっと怖いもの無しで俺らがすべてだと思っていた。
ううん。違う。
本当は分かってた。
永遠には続かない。
だからって辛いことから逃げることも出来ない。しちゃいけない。
俺らが無敵なのはこの小さい世界の中だけ。無敵でいられるのは今だけ。
知ってたけど気付かないフリをした。認めそうになるとバカみたいに騒いだ。
それも今日でオシマイ。
「向島 朱」
「はい」
立ち上がってステージ上に歩いて行く。
校長が差し出した卒業証書を受け取った。
無敵な俺らは今日でオシマイ。これからはでっかい社会で揉まれてく。
だから今日で最後。
制服のポケットからカメラを取り出して、全校生徒に向けた。
一、二年生も同級生もセンセーも来賓のオヤジ共も父兄の方々も大好きな体育館も全部収まってる。
「はいはい皆さん、こっち向いてぇ」
シーンとした体育館に向かって大声で叫ぶ。センセーが頭を抱える姿が目に浮かぶ。
悪いな、最後の最後まで立派じゃなくて。