thoroughbred-6
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「へえ、こんなに沢山の買い方があるんですね」
「うん、ちょっと前まではこんなに種類がなかったらしいんだけどね」
一着になる馬を予想する単勝と、意味はわからないが三連単という名前の買い方は知っていたが、こんなに種類があるとは思わなかった。
「とりあえず、光一くんは初めてだから一番当たりやすい複勝から説明するね」
「はい、お願いします」
複勝と言うのは、出場頭数にもよるが基本は三着以内に入る馬を予想する買い方で、当たりやすいがそのぶん、配当金は低いらしい。
他にも新聞の見方をおしえてもらった。
いきなり知識を詰め込むのは大変なので要点しか教わらなかったが、それだけでもかなりの情報量で、俺は少し混乱してしまった。
要点だけでもこれだけなのだから、すべてを把握するなんてすごいと思った。
「あれはなにやってるんですか?」
俺は館内に設置されたテレビモニターを指差す。
画面では、馬に乗る人がテレビでよく見るプロ野球のヒーローインタビューのような状態で手を振っていた。
「競馬ではもちろん勝った馬が表彰されるんだけど、馬に乗る騎手、ジョッキーとも呼ぶんだけど、その人たちも通算勝利数で記録が出たり、大きなレースで勝ったときはあんなふうに表彰されるの。同じように、調教師や馬主もね」
「へえ」
「一見、騎手なんていらないように見えるけど、馬の走るルートを指示したり、気合いを入れさせたりして重要な役目を担ってるんだよ」
「すごく奥が深いんですね」
「うん!」
このとき俺の中ではすでに、競馬はギャンブルだという概念はなくなっていた。
これはデータを駆使するスポーツだ。