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thoroughbred
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thoroughbred-10

「俺と付き合ってください!」

「…ありがとう、でも16頭の中から一着を当てるなんて簡単じゃないよ」
桃絵さんは大きなリアクションを取らず、冷静だった。
なんだか自分が子どもみたいで恥ずかしくなってくる。
「…こうしよう?私も自分の買い目と別に一頭だけ単勝を買うから、選んだ馬が先にゴールしたほうが勝ち。どうかな」
「…はい」
桃絵さんはハードルを下げてくれた。
とてもうれしいことだけど、やはりすぐに返事をもらえるような告白をすればよかった。
告白なんてしたことなかったから、本格的に恥ずかしさがこみ上げてくる。
「じゃあ、選ぼうか」
桃絵さんは何事もなかったかのように新聞を俺にも見えるように広げてくれた。



***

桃絵さんは先に馬券を買いに行っているが、締め切り時間が間近になっても俺はまだ決めきれずにいた。

初めての競馬で、知識など皆無だ。
フィーリングに頼るしかない。
そんなことを考えながらもう一度新聞に目を通す。

そこで先ほどの桃絵さんの言葉を思い出した。


馬にもちゃんと名前があるから、できるだけ覚えてあげてね。


そうだ。
俺は流し読みしていた馬の名前をもう一度真剣に見ていった。
「…」
そこで見つけた名前。

10番、ラブストーリー。

大きなタイトルは取っておらず、このG?の舞台では本命どころか伏兵とも呼ばれない馬らしい。
だが、俺はこの馬が気になった。
できればこの馬で、俺も桃絵さんとのラブストーリーを。

「決めた?」
馬券を買ってきた桃絵さんが戻ってくる。
「はい、今ちょうど」
俺はこの馬に決めた。
「当たるといいね」
桃絵さんはちょっと顔を赤らめてはにかんだ。
「はい!じゃあ買ってきます」

俺は駆け足で馬券を買いに行った。


もうじき、大勝負が始まる。


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