王子様と私 2-5
「おまえはきっと、これから俺のせいで大変な思いをする。忘れるな、それは俺のせいだ、恨むなら俺だ。他の人間に悪意を向けてはならぬ」
「……」
返事ができないでいると、わかったか、と念を押され、私は微かにうなずくしかなかった。
身体を離す。また次々と服を脱がされる。
今度はされるがままに、私はまっすぐ立っていた。
産まれたままの姿になると、彼は完璧な着衣のままで私を眺める。
この異常な恥ずかしさを彼は知らないのだろうか。
「やはり、綺麗だ。……が、若干、細いな」
「……そうですか?」
疑問を口にしながら今度は私が彼の衣服に手をかける。
ボタンが多く、ややこしい仕組みに悪戦苦闘しつつ、なんとかすべて脱がせることに成功した。
されるがままだった彼が私に手を伸ばす。キスよりも先に抱きしめられたことに、私はひそかに感動していた。
彼の癖なのだろうか、後頭部をつかまれ、舌を差し込まれる。
息が苦しい。閉じたまぶたの裏に、涙が滲んだ。
「入るか、冷える」
「……はい」
たっぷりとお湯の張られた、猫足のバスタブ。二人で入るとさすがに溢れたが、王子はまったく気にしていない様子だった。さすが王族だと、すこしだけ皮肉に思った。
彼の胸け、身長差からか私の頭には彼の顎が乗っている。労働に費やした一日にこの湯はありがたい。両手を真っ直ぐ伸ばし、こっそりと伸びをした。
わかっていて、彼はここに連れてきてくれたのだろうか。純粋に、嬉しかった。
「なにを考えている?」
「……いえ」
「なんだ、はっきり言え」
「んッ……なんでも、ありません」
たぶん私の回答は不満だったのだと思う。それでもそれ以上はなにも言及してこなかった。
その代わりかなにかはわからないが、後ろから抱きしめられるようにして、彼の手が私の胸をやわらかくつぶされる。乳首に彼の指先が触れるたびに、ぞわりとお臍の辺りが甘くしびれた。
半分以上湯に濡れてしまった色素の薄い私の髪を彼が掴み、無理な姿勢で後ろを向かされて、わりと強引にキスをされた。
「エル、舌を出せ」
おとなしく舌を出すと、容赦なく絡めとられ、吸われる。
お湯の温かさと与えられる甘い刺激に、そろそろわけがわからなくなってきた。
自分の身体であるのに、まるで自由が効かない。身体を這う彼の手を止めることもできない。ものすごく触れてほしくないくせに、いったん触られてしまったらもう、陥落するしかない足の付け根の奥の方を易々とこね回してみたりする。彼は私の胸中など知る由もなく、とてつもなく自由だった。