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王子様と私
【ファンタジー 官能小説】

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王子様と私 2-3

「なぁ、どうしてこんなにおまえの話に皆が騒然としているか、知らないだろ」
「……私の出身が十二領だからじゃないの?」


やっぱりな、とフレイはひとり頷いた。手元の本を持ち直して、ニッと笑う。


「ライン様は、召し上げられた侍女に手を出してないんだよ。ヤったのは九領の色町の女共だけだ」
「……うそ!」
「馬鹿、俺が嘘吐いてなんの得があるんだ」


侍女では私が初めてということ?
どうりでいきなり縛るだとか、そういったあまり一般的ではないことができてしまうわけだ。

そしてあの侍女たちの悪意は仕方ないものだということも同時に悟る。申し訳ない気持ちに肩を落とした。


「わかった。それが正しいとしましょ、でも、よりによってなんで私なの?」
「さーな。一目ぼれじゃねぇの?」
「……なにそれ、ちゃんと考えてよ。フレイは逸材なんでしょ」
「関係あるか。だいたいな、考えたって仕方ねぇだろ?」


確かにそうだ。
嫌になるくらにフレイは正しい。
上がったり下がったり落差の激しい私の表情に、フレイは微苦笑をこぼして言った。


「もう行け、俺は仕事するから」
「あ……ごめんなさい、邪魔したわね」
「たいしたことじゃねぇよ。俺を誰だと思ってる」


そう言って、彼は知識のひしめく書棚の奥へ消えていった。
仕事中のフレイへの、そして献上された美しい娘たちへの若干の罪悪感に、私は少し落ち込んだが、すぐにそんなことは気にならなくなった。
図書館の重い扉を開けた先に、憮然とした王子が壁に寄りかかっていたからなのだが。


−−−−−−


「王子、護衛も連れずに無用心です」


彼はほとんど表情を動かさずに、そうだな、と答えただけで、じろりと私を見詰める。
訊きたいことはたくさんあったが、ぴりぴりした彼の雰囲気に、私は口を噤んだ。
バケツを持った手が、水の重さにしびれるのを感じた。


「どうして昨日は来なかった」
「……呼ばれなかったからです…が?」


王子は呆れたような、呆気にとられたような、なんとも微妙な表情で私に近づく。身構えた私の手からバケツを取り上げて、慌てる私を尻目にただ短く、ついてこい、と言った。
嫌です、とはもちろん言えるはずがない。


「聞かなかったのか、侍女の中で共に朝を迎えたのはおまえがはじめてだ」
「……つい先ほど知りました」
「そうか、それなら仕方ないか」


一呼吸おいて、彼は続ける。
私は彼が取り上げたバケツが気になって仕方がない。


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