傷痕より誓いの口づけを〜for future〜-3
「千歌、……落ち着いて、聞けるな」
「うん…?」
「子供いるって。今日のはそれで、……今は無事だけど流産しかけて」
こども
流産
え……?
え、なに……?
水の中のように滲み出した世界で、頭の中だけが響くようにガンガンする
「…歌!千歌!!」
「ごめっ…りゅーくんごめん、ご…め、ん、ごめ……っ、んなさい」
「千歌!!」
叫ぶように呼ばれて理性が戻ってきたって頭の中はまだ荒れている
赤ちゃんは嬉しい
でも……私はまだ流くんに確かめてないのに
――私のこと、好きだから結婚してくれるの?
――責任じゃなくて?
「流くん…あの、ね…あの……あのね」
「うん……あのな千歌、…ごめんな。ずっと大事なこと言ってなかった」
何、何を…言ってなかったの?
よっぽど不安げな顔をしてたのか、流くんは額を合わせて笑った。
「千歌が不安なのは知ってた」
……知ってた?
何か知って、……それでも何も言わなかったの……?
「愛してる、千歌の全てを愛してる。……だから俺は傷がなくたってあったって、千歌と結婚したかったよ」
――きっと、絶対に
「どっちなの…それって」
そう言いながら声が笑ってしまう
………ホッとしても、人は泣けてしまうんだ
知らなかった
急に視界が晴れたようにさっぱりした思考の中で、そう思った。
「千歌まるごとを愛してる……だから結婚してください」
恭しく薬指のリングに口づけられて泣きながら頷いた
「これからは不安にさせない」
「千歌も、この子も……」
そう言ってまだ平ぺったいお腹に手を添えられる。
肌に当たる流くんの手の平の感触から、お腹の辺りが小さく脈打ってるような気さえしてくる
――ここにいるんだ
私と流くんの赤ちゃん……
「俺の手で幸せにしたい」
あぁ、もう……流くん意地悪いよ
私もうとっくに幸せだよ
流くんのせいで泣いたりするけど、流くんのお陰でちゃんと幸せだよ