傷痕より誓いの口づけを〜for future〜-2
――わき腹から背中に走る、ひび割れたような傷痕。
これが、……これがなかったら。
そう思うとき同時に二つのことを思う。
なかったらどうなってたの?
なかったらこうならなかったの?
流くんとのことも、曖昧に流してしまえたら楽になれるのかもしれない。
『好きだから』
『傷があるから』
そんな白黒で分けたい自分がいて、曖昧なグレーにしたくない私が我が儘なんだろうか。
でも、でも…
『義務』とか『責任』で流くんの隣に立たせてもらいたくないの。
――本当に私を隣に選んでいいの?
ぐるぐる、堂々巡りの思考に比例して目眩がしてるみたい。
違う――これ目眩だ。
崩れる――
気がついたら膝が笑ってて、しびれたような体どこにも力がはいらない。
派手な音を立てて横に崩れたまま、体が言うことをきかない。
こわい、くるしい、助けて、助けて――
――りゅー、くん
音に駆けつけた母が私を見るなり、泣きじゃくりながら叫ぶように、千歌千歌と呼ぶ。
のを見て私の意識は途切れた。
気がついたら一面真っ白な部屋だった。
ツンとくる独特の匂いで病院だとわかる。
でも――どうして、病院?
『千歌まだ寝てます?』
『まだ――ね』
『すみません』
『やあね、何で流くんが謝るのよ』
あぁ――声が遠い
眠たい
体が重い
「千歌…」
「…りゅーくん?」
白いまっさらなカーテンの向こうから覗く流くんの顔は、汗ばんで…真っ青だった。
どうして……
……汗ばんでるのは急いでくれたから?
真っ青なのは……心配してくれたから?
不謹慎でも胸の奥がじんじん熱くなる
「りゅーくん…」
起き抜けで舌足らずな声で呼ぶ私は、なんて意地が悪いんだろう
心配されていることが、…嬉しかった