青いころの先に-5
「白木さん、て呼んでもいいですか」
「柾でいい」
「柾さん、名前呼んで」
同窓会の喧騒のなか、テーブルの下、隠すように繋いだ手の持ち主が呼んだ。
「あおい」
私のずっと欲しかったもの
欲しかった声
私はまた、たぶんがむしゃらに頑張って背伸びをするんだろう。
でも、それでもいい。
今度はこの手がある
後悔しない
私は柾さんの隣にたてるなら頑張りたい
「今日まで頑張ったな」
頑張ってくれてありがとう
この言葉で全部報われた
よかった
頑張ってよかった
「柾さん、抜け出しちゃいたい」
甘えるように絡めた手は私の手と全然ちがって、……それでも互いに緊張して冷えた感覚や汗ばんだ感触に、驚くほど嬉しくなった。
今だけは自惚れさせて。
柾さんも緊張してるって
柾さんもドキドキしてるって………自惚れさせて
「あと少ししたらな」
すりよるように恋人繋ぎにした手を、テーブル下に隠して、涙で滲んだ世界はキラキラしていた。
あなたの隣で見る世界はまるでちがっていて、どこよりも輝いて見える。
きっとこれから、もっと輝いてる。