青いころの先に-3
「がんばりますから」
いざもう理由なくは会えないんだと思うと、準備した言葉は何一つでてこない。
でるのは、……誤魔化し続けた本音だけで。
それすら止まってくれない。
「いつか絶対相応しくなります。先生に相応しくなれるようにがんばります。だから、だから――また、会えたとき、先生がそう思ってくれたら、……そのときは私を隣に立たせてください」
涙が溢れそうで、零れないように必死で目に力をいれていたの…今も忘れられない。
あんなに泣きたくて泣かないでいたかったことは、今でもない。
「いや、あの…先生を目標に、させて、くださいって言いたくて」
初めて見せる私服だからと気合いを入れて選んだスカートには握り締めすぎて皺がよっていた。
スカートを握る手は白くなるほど力が入っていた。
「……ああ」
撫でるように頭に置かれた手に、こらえてた涙がとまらなくなった。
本音だった。
自分すら誤魔化した私の本音だった。
先生が好き。
でも隣に立つ自分なんて想像もできなかった。
自分が一番、子どもな自分も甘ったれな自分も知っていたから。
先生の隣に、今の私じゃ立てない。
立ったって足手まといになる。
待っててくれなくていいから、追いつくから。
追いつける私でありたい。
だからがんばるから。
追いかけてること、知っていて。
「――咲、柴咲?」
「あ、はい」
思い返しすぎてかけられる声に全然気がつかなかった。
「飲みすぎたか?」
「――たぶん。でも大丈夫です」
へらりと笑い返すと先生はふいに話し出した。
「柴咲のことは、よくきいていた。驚くほど立派にやっている、と」
「そんな、全然」
そう呟いた瞬間ぼろっと涙が零れて自分自身驚いた。
全然、その言葉に偽りはなかった。
全然立派だなんて自分自身にそうは思えなかった。