青いころの先に-2
『そんなに柴咲好みの物ばかりか?』
『は、い』
それだけ言うのがやっとで、小さく笑う音に顔を跳ね上げた。
『そうか。どこがだ?』
その笑顔で、問いかけ一つで、私の口から言葉は消えてしまった。
どこが、なんて……言えない。
私は、先生、あなたが好きなんです。
身につけてる物や愛用してる物じゃない。
物なんかじゃない。
笑いかけてくれる先生――あなた、その人が好きなんです。
途方にくれて、途端に口癖だった「好きです」は、もう言えなかった。
ふざけた口調の『好きです』なんてもう言えなかった。
言いたくなかった。
ただ、授業の度、廊下ですれ違う度、見掛ける度、私の視線は先生で止まってしまって……周り全てから色がなくなる。
ちがう――、先生だけがなにより鮮やかに私の世界にいるから。
視線が引き寄せられてしまう。
好きだなんてじゃれるように言えてたときよりも、ずっと好きになってしまった。
もう誤魔化せないほど、先生だけが私の世界で色づいてしまってる。
―――だから、私は
わいわいと騒ぎたつ同窓会の席を、少し外れた場所から優しげに見る白木先生は、――やっぱり。
私の特別な人だった。
今だって、引き寄せられて惹きつけられて、いつかその引力に引っ張られて戻れなくなりそう。
初恋の欲目をひいても、胸が鷲掴まれてぐわんぐわん揺さぶられる。
平常心なんてどこかへいってしまう。
――卒業式の翌日にあんなことをしてしまったくらい
伝えなきゃ終われない気がして、結局卒業した後すぐの翌日に……一人で学校を訪れた。
軽く好きだとか、憧れてましたなんて言って、自分のために区切りをつけたかった。
卒業したら忘れられる。
失恋の痛手なんてごまかせる。
ただ憧れてのぼせてるだけ―――わかってる
わかってる
だけど言いたい。
ちゃんと知っていて欲しい。
身勝手さだけで、先生を呼び出した、のに、――いざ先生を見ると口から出たのはまるでちがった。