投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

青いころの先に
【その他 恋愛小説】

青いころの先にの最初へ 青いころの先に 1 青いころの先に 3 青いころの先にの最後へ

青いころの先に-2

『そんなに柴咲好みの物ばかりか?』
『は、い』

それだけ言うのがやっとで、小さく笑う音に顔を跳ね上げた。

『そうか。どこがだ?』

その笑顔で、問いかけ一つで、私の口から言葉は消えてしまった。

どこが、なんて……言えない。

私は、先生、あなたが好きなんです。
身につけてる物や愛用してる物じゃない。
物なんかじゃない。

笑いかけてくれる先生――あなた、その人が好きなんです。


途方にくれて、途端に口癖だった「好きです」は、もう言えなかった。

ふざけた口調の『好きです』なんてもう言えなかった。
言いたくなかった。


ただ、授業の度、廊下ですれ違う度、見掛ける度、私の視線は先生で止まってしまって……周り全てから色がなくなる。

ちがう――、先生だけがなにより鮮やかに私の世界にいるから。
視線が引き寄せられてしまう。



好きだなんてじゃれるように言えてたときよりも、ずっと好きになってしまった。



もう誤魔化せないほど、先生だけが私の世界で色づいてしまってる。


―――だから、私は



わいわいと騒ぎたつ同窓会の席を、少し外れた場所から優しげに見る白木先生は、――やっぱり。

私の特別な人だった。
今だって、引き寄せられて惹きつけられて、いつかその引力に引っ張られて戻れなくなりそう。


初恋の欲目をひいても、胸が鷲掴まれてぐわんぐわん揺さぶられる。

平常心なんてどこかへいってしまう。


――卒業式の翌日にあんなことをしてしまったくらい



伝えなきゃ終われない気がして、結局卒業した後すぐの翌日に……一人で学校を訪れた。


軽く好きだとか、憧れてましたなんて言って、自分のために区切りをつけたかった。

卒業したら忘れられる。
失恋の痛手なんてごまかせる。

ただ憧れてのぼせてるだけ―――わかってる

わかってる

だけど言いたい。
ちゃんと知っていて欲しい。

身勝手さだけで、先生を呼び出した、のに、――いざ先生を見ると口から出たのはまるでちがった。


青いころの先にの最初へ 青いころの先に 1 青いころの先に 3 青いころの先にの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前