ある季節の物語(秋)-5
マンションの窓からは、夕暮れの秋のさわやかな風が吹いてくる。
私は掃除機をかけながら、あの男と会うことができなかったことに、体の奥から滲みでるよう
な失望を感じていた。
私は、抜け殻のようになった体を感じながら、ぼんやりと掃除機をかける。そのとき夫の書斎
にあるデスクの隅の書類の中に埋もれたもの…
電話器につながれた録音再生器のような小さな機器…私はそのイヤホンを耳にすると何気なく
スイッチを入れる…
それは、あの私の喘ぎ声だった…私の膝が小刻みに震える…。
夫だったのだ…あの電話はすべて夫が仕組んだものだったのだ。
もしかしたら…
あのとき私を誘ったカルチャースクールの元同僚の女性もかつて夫の部下だった。夫はあの女
性に私をあのクラブに誘うことを頼んだのではないか…そして、あの若い男に酔った私を誘って
あのホテルでの淫猥な行為を行うことを事前に依頼していた…。そして送られてきたあの写真や
手紙、黒い縄…
すべてが私の想像だった…。
窓から見える秋のオレンジ色の黄昏が、私の陰部を妖しく掻き毟るようだった。私は夫に対す
る新たな肉情に心を疼かせ始めていた…。