ある季節の物語(秋)-4
「…あの夜の、あなたのあの声を僕はふたたび聞きたい…僕は、隣の部屋でいつでもあなたを待
っています…もちろんあなたが好きな縄や鞭を用意して… 」
私はとっさにそのおぞましい手紙と縄を黒いゴミ袋に放り込む。
あのときの肉の記憶が甦ってくる…そして私の陰部が少しずつ潤みを持ち始めていた。夫と体
を重ねるときには、決して感じることができないあの疼き…。
別人のような私の体の疼きだった。
それからというもの私は、その疼きに耐えられないような火照った体を引きずるような日々を
送っていた。
…どうしたんだ…今夜は、すごく濡れているじゃないか…夫の掌が私の陰部を探る。
…えっ…そ、そうかしら、いつもと変わらないわ…
私は隣のあの男の住戸の扉をノックすればいい…。あの男は、あの縄を用意して私を待ってい
るのだ。あのぬめりをもった堅くそそり立つように屹立したペ○スが、私を求めている…。
その男の住戸の扉の前を通るごとに、私は股間に烈しい疼きさえ感じるようになっていた。
そして、私は夫のいないあの夕方、その扉をノックした。
…そこは、空いた部屋ですよ…と、通りかかったマンションの管理人が言う。
…えっ…そんなはずないわ…私は動揺を隠せなかった。老いた管理人は私に部屋の中を見せて
くれた。
そこには誰も住んでいなかった。引っ越したのだろうか…。
実は、その部屋あまり陽当たりがよくなくて人気がないんですよ。だからずっと空き家のまま
なんです…と、管理人が苦々しく言った。
そうですね…ときどき部屋を見たいって人には鍵を貸すことがありますよ…特に夜の騒音とか
気にされる方もいますから、一晩程度は部屋を開けてやったりすることもありますね…