ある季節の物語(秋)-2
あれは夫が数日間の出張をした三ヶ月前だった。
…ダンナがいないときぐらい楽しみましょうよ…とカルチャースクールで会った元同僚だった
女友達に誘われてあのクラブに行ったのは…。
あの若い男は二十歳後半ぐらいの年齢だったろうか…どこかに憂いを湛えた蠱惑的な黒い瞳と
しっとりと潤みをもった唇をしていた。そして引き締まった体つきと優雅な身なりが私の目を惹
きつけたのだった。
そして私と女友達は、それぞれの男に誘われるままあの店の前で別れた。少し酔った私は、男
に肩を抱かれる久しぶりの心地よさに、あの男とホテルに入ったのだった。
「ホテルアルフィン」と微弱なネオンの光で縁取られた路地裏のホテルの名前が、どこか妖しい
雰囲気さえ漂わせていた。
そこは、SMホテルだった。
石肌の壁と赤い絨毯で埋め尽くされたインテリア…淡い灯りに照らされた磔用の木柱、天井の
太い丸太の梁からは不気味に鎖やロープが垂れ下がる。
その若い男は薄笑いを浮かべながら、ずしりとした黒ずんだ縄を取り出したのだった。慣れた
手つきで私は衣服を剥がれ、全裸にされ、縄で縛られる…。そして磔柱に縛りつけられる。
太腿の付け根を大きく裂かれるように開かされた私は、その男の吸いつくような指先で、体の
すみずみまで弄くられ、陰部の壺を男の指で捏ねられる…。
そして私は緊縛された体を悶え腰を振るのだった。
初めて味わう甘美な肉の快感だった…。私は喉の奥から迸る喘ぎ声とともに、唇の端から涎を
滴らせていた。
私の熟れた体が烈しい肉の刺激を求めていたのだ。私は自分が見知らぬ男性にあれほど大胆に
なれるとは思っていなかった。
渇ききった私の体は、あの男の手に操られるように潤みをたたえていったのだった。
あのときの私の乳房や股間を強く喰い緊めた縄の感触が甦ってくる。縛った私の肌があの男に、
粘り気のある熱い舌で愛撫され…そして尖った乳首や縄で締め上げられた秘裂を男の白い歯で噛
まれる心地よい痛みの記憶…。
私は何の抵抗もなくその行為を受け入れたのだ…。いや、私自身の体がその欲情を求めていた
のだった…。
その短い手紙は、夫との行為の日に私のもとに送られてきた。
…なんですって…と、私はその手紙の文字にうわずったような声をあげた。
あの男は隣の住戸から、私たちの部屋を見ているという…それも夫とのセックスの最中に…
そしてその手紙の最後に、セックス中は窓とカーテンはしっかり閉めるようにと、皮肉ったよ
うな言葉さえ記してあった。
私は慌てたようにバルコニーに近寄る…あの角の住戸だ…その部屋の窓には、ベージュの厚い
カーテンが引かれてあった。