未完成恋愛シンドローム - 目覚め --11
「なんやねん」
「つまり、和葉ちゃんこーへんってこと?!」
「・・・」
まぁ、間違えてはないが、今の会話で気にすべき点はそこか・・・?
「先に約束あんねやったらしゃーないやろ」
「えー?せっかく部活も、兄貴が事故ったってゆーて休んだのに・・・」
・・・・。
「勝手に兄貴殺すなお前は・・」
「死んだとは言うてへんし」
―だから、問題はそこか・・?
「一緒に来る?ゆーし」
不意にカイトが口を開いた。
「・・つかお前ら、結局なにを約束してたん?」
すっかり聞くのを忘れてた。
「え。」
「映画」
和葉とカイトの声が被った。
―今、「え」って・・・。
「ポリー・ハッターってゆー映画の試写か」
「ちょい待て。ハ○ー・ポッターちゃうんかい」
あんまりと言えばあんまりな言い間違いに、流石に突っ込む。
「ちゃうちゃう。ポリー・ハッター」
そう言って、リュックの中からチケットを取り出すカイト。
「・・・」
「ね?」
なんだろう、このツッコミ所満載のチケット・・・。
「これ、どう考えても出てるの日本人やん」
出演者名を見ながら言う。
「だって日本の映画やもん」
「・・・・・」
なんというか・・・。
「そもそも、なんであんたこんなもん持ってんねん」
チケットをぴらぴらさせながらカイトに聞く。
「おかんにもろた」
・・・。
「オレ、一言もそんな話聞いてへんねんけど」
段々、頭痛くなってきた・・・。
「だってイヴ、まず映画とか見に行かへんやん」
「・・・・」
まぁ、確かに・・・。
でもなにも言われないってのも、ハブにされてるみたいでなんか嫌。
「・・・。つか、なんの映画なん?ファンタジー?」
「え?ちゃうちゃう」
パタパタと手を振るカイト。
「・・んじゃ、なに?アクション?」
「ハードボイルドギャグ探偵物、らしい」
「・・・・・・・」
―聞くんじゃ無かった・・。
つか、なにをどうしたらポリー・ハッターって名前でそんな設定になるんだ・・・・。
ひたすらに痛む頭を抱えながら、なんとか思考を回転させる。
「結局、」
「ん?」
「あんたさっきゆーしも誘っとったけど、チケット何枚あんの?」
「ああ」
―人数分ちゃんとあるんだったら、わざわざコタローん家行かんでもそっち行きゃええし・・・。
「3枚」
「・・・・」
一瞬オレの頭に浮かんだ淡い期待は、ものの見事に裏切られた。
「ゆーし」
「にゃ?」
―にゃ、じゃなくて・・。
「結局、見に行くん?」
「もちろん」
・・・・。
―まぁそんな気はしてたけど・・。
「その映画、何時からなん?」
カイトに聞く。
「んー。時間的に結構ヤバいから、そろそろ行きたい」
校舎に付いている時計を見ながら言うカイト。
・・・・。
「ええから・・判ったから早よ行けお前ら」
額に手を当てながら言う。
「せんきゅー」
「ごめんね」
「また明日なー」
それぞれに好き勝手なことをほざきながら、三人は駅の方に走って行った。