『はかないダイヤモンド』-11
「おい、あれマグナム坂田じゃね?」
「ホントだ。プライベートでもバカなことやってるぜ」
「あいつ、バカだよな、ワハハ…」
「アハハ、本当に気持ち悪い」
倒れている俺の周りに、数人の人だかりができていた。
みんな笑っていた。みんなで俺を見下していた。
そいつらの笑い声が頭に響いて、胃の中の物を全部出しそうになった。
俺は笑わせているんじゃなくて、笑われていた。
一体、こんな事の為に俺はどれだけ大切なモノを失ったのだろう。
そう思うと、情けなくて自然と涙が溢れてきた。
十数年ぶりに流す本物の涙は痛かった。
今日は、俺の初レギュラー番組の収録日だった。
番組の要求に無難に答えながら、いくつもの笑いをとっていく。
たくさんのモノを失った俺に残されたのは、皮肉にもお笑いだけだった。
今日も、明日も、それからずうっと先も、俺は悪魔のような観客に笑われながら生きて行く。
それが、俺の選択した人生だから。