AH! MY GODDESS ラストストーリー-4
『私一人じゃ、決められない……。だから話してくるけど、それでも螢一が拒否したら……その時は諦めて。いいわね?』
子供みたいに、しゃくり上げながら彼女は頷き、そしてうわ言の様に呟く。
『こんな辛い思いをしてまで隠したい事って何なの?私はどうしたらいいの?わからない…わからないの……』
小刻みに肩を震わせる彼女をウルドは優しく抱きしめた。
『大丈夫。ああいう性格だから口にはしないけど、螢一が一番愛してるのは、あんたなのよ。いつでもあんたのコトを考えてる。そう、自分の命よりも……』
ビクンと身体を震わせ、ベルダンディーはウルドを見た。つい、うっかり話してしまいそうになったウルドは慌てて口を閉じると、そのまま廊下に出て螢一の部屋の方へ歩いて行く。
自室で横たわる螢一は突如襲った耳鳴りに顔をしかめた。
『ずいぶん辛そうね、螢一。』
結界を張り、螢一の傍に来たウルドは静かに言う。
『思ってたよりも辛いね。ははっ……。』
顔を歪めながらも螢一は軽口を叩いた。
『どうすんのよ。ベルダンディー泣いちゃったじゃない!!』
『ゴメン……ウルド』
そう呟く螢一の頬にそっと手を添えると、ウルドは唇を重ねた。
『なっ、何すんだよ!!……って、あれ?』
ウルドを跳ね退け、勢いよく後ずさる螢一は自分の身体が驚く程に軽い事に気付く。
『神の息吹よ……少しは楽になった?でも、一時的なんだけどね。』
顔色の良くなった螢一を見ながらウルドは深い溜息を付いた。
『どうするの?ううん、私はどうすればいいの?あんたとの約束は守んなきゃならないけど、泣いてる妹を見るのは辛いわ。』
『ウルドはどうしたい?』
『わかんないわよ!!わかるなら、とっくに何とかしてるわよ!!』
逆切れした様にウルドは叫ぶ。螢一は静かに笑い、優しくウルドを抱きしめた。そんな突然の螢一の行動にウルドは固まる。
『ありがとう……ウルド。もういいよ。プロテクトを解いてくれ……全てベルダンディーに話していいんだ。』
『あんた、自分が何言ってるのかわかってんの?そんなコトしたら……ひょっとしたら……』
言い淀むウルド……。何となく、言葉の先が螢一にもわかった。
『今までが幸せ過ぎたから、決断しなきゃならないのに逃げてた……。だから、覚悟しなきゃならないんだ、何があっても……』
『本当にいいのね?』
螢一は頷く。応える様にウルドも頷き返す。瞳の中に決意を秘めて、ウルドはもう一度螢一と唇を重ねる。
『別れのキス?』
プロテクトを外し、立ち去ろうとするウルドに螢一は言った。毅然とした態度で振り返り、腰に手を当ててウルドは微笑んだ。
『いいえ、幸運のキスよ。私は女神なんだから。』
そう言ってウルドは部屋を後にした。
『私も覚悟を決めなきゃね。』
そう呟きながら、ベルダンディーの元ヘウルドは歩いて行く。
(ああっ女神さま!より)
『私に火急の用とは何だね?ベルダンディー』
ウルドから話しを聞いた数時間後、ベルダンディーは神の座に控えていた。
『一級神二種非限定ベルダンディー、神様に伺いたい事があって参りました。』
『申してみなさい。』
すぐ傍にいるだけで、その圧倒的な存在感に気圧されそうになる。それでも瞳の中に揺るぎない意志を込め、ベルダンディーは真っ直ぐに視線を向けた。
『女神が人間に転生する事は可能なのでしょうか?』
しばしの間が開く。そして、大いなる存在は含み笑いを始めた。