AH! MY GODDESS ラストストーリー-10
『はあぁぁっっ!!!』
掛け声、一閃……リンドは螢一達の前から姿を消した。目も眩む程の光りが瞬き、攻撃の全てはリンドの手によって粉砕される。再び螢一の前に降り立ったリンドは真っ直ぐに見据え、口を開いた。
『勘違いするな。私は私の意志でここに来た。それに……』
続けさまに第二波が襲う。しかし、リンドの前に、それらは跡形も無く消え去る。
『生涯の友の窮地を、黙って見ている程……私の友情は軽くない!!』
なんという強さ……
なんという誇り……
毅然とした横顔には後悔の陰など微塵もない。彼女は自分が何をしているのかわかっている筈である。そしてそれが、どんなに自分の立場を悪くするのかも。それでも彼女はここにいる。自分の信念に従って……。
『すまない……リンド』
『謝るな!!君は君の信念に従ったのだろう?そして、彼女を護る為に私の前に立ったはず……違うのか?』
(ああっ女神さま!より)
そうだ……。自分は覚悟を決めたはずじゃなかったのか?命懸けで彼女を護ると……。迷いの消えた螢一の瞳は力強さを増して行く。
『それでいい……。もっと誇るんだ自分を……。我が友、森里螢一。』
そこで初めてリンドは笑顔を見せた。螢一の腕から力が抜け、背後にいたベルダンディーが姿を現す。
『リンド、あなたの気持ちは嬉しいけれど……』
『ベルダンディー、私は笑っているか?』
台詞を最後まで聞く事なく、リンドは尋ねる。答えの代わりにベルダンディーは頷いた。
『そうか。この笑顔は君達に教わった、闘う以外にも喜びがあるのだと。だが、我はワルキューレ!!闘うは我が悦び!闘うは我が義務!君達を護る為に闘うのならば、たとえこの身が千にちぎれ、万に砕かれようとも後悔などするはずも無い!!来るぞ!!』
前の攻撃と違い、遥かに物量を増した攻撃が降り注ぐ。リンドはその持てる力の全てを使い、攻撃を退けていく。しかし、圧倒的な物量の前にその全てを防ぎきる事が出来なかった。
『しまった!』
打ち漏らした数本の光りの矢が、螢一達へと向かう。それを、どこからともなく伸びた茨(いばら)が叩き落とした。
『あなたを護りたいと思ってるのはリンドだけではなくてよ?』
驚いて振り返る二人の前に、また一人女神が現れた。こんな状況下にあっても、いつもと変わらぬ丁寧な言葉使い、自らの美しさを誇示するかのような、露出度の高い服。胸元で軽く腕組みをする彼女のいつもの仕種。
『ぺ、ペイオース!?』
『そんなに意外そうな顔をしないで頂けます?だって、一番驚いているのは他でもない私なんですもの……』
困惑した笑顔を浮かべてペイオースは呟いた。
『どうしてあなたまで……』
ベルダンディーの問い掛けに彼女は小さく溜息をつく。
『リンドの言葉を借りるなら、私の信念に従った結果と言う事かしら?困るんですわ、あなたがいないと張り合う相手がいなくなって……』
そう言って彼女もまた、にっこりと笑った。
『一体、何だと言うのだ!!』
突然、大気を震わせる声が天から響いた。その声に反応するように二人を挟み、リンドとペイオースは左右に別れて身構えたまま天を仰ぐ。
『一人の人間の為に、何故お前達まで私に逆らうのだ!!』
ビリビリと痺れるような波動が降り注ぐ。その圧力にも屈せずに三人の女神は叫んだ。
『我が生涯の友の為!』
そう言ってリンドは戦斧を構える。
『わたくしのライバルに勝ち逃げさせない為ですわ。』
腕を組んでペイオースは空を見上げる。