保健体育 〜徹底した性教育〜-1
2020年の統計で日本人のセックスレス(1年以上セックスがない)の夫婦が8割を超えたことをきっかけに、政府は緊急の対策を講じることになった。その原因を調査したところ、一つは仕事が忙しすぎる、もう一つはセックスに関する知識の不足であった。これに対して政府は思い切った政策を打ち出した。
一つは勤労時間の厳しい制限。一週間の勤労時間を40時間までとし、一切の残業を認めない。平日の5時以降及び日曜日の勤労の禁止。一部の飲食業は特別な許可を得れば5時以降や日曜日でも営業できるが、かなり厳しい審査が必要だった。さらに9時以降のテレビ、ラジオは禁止、インターネットの回線速度にも制限がくわえられた。これにより多くの人は6時には家に帰るようになり、家族で集まって食事を取る家庭が増えてきた。またその後の時間を持て余した多くのカップルがセックスに励むようになった。同時にセックスに関する知識を求めて多くのセックスの学校ができた。この国民の要求に応えて、政府はもう一つの思い切った政策を打ち出した。それは、学校の授業にセックスを取り入れることだった。
義務教育である中学校では、三年時に男女の違い、射精の仕組みや、生理の基礎知識などが教えられた。高校では、性感染症、妊娠の仕組み、などの知識にくわえて、異性とのコミュニケーションの取り方、デートの仕方、ベッドの上での雰囲気作り、体位、道具の利用など実践的な知識も盛り込まれていた。さらに高校三年時限定で実習があった。これは人間そっくりの人形を用いて実際に性交渉をするというものであった。もちろん男女は別のクラスになっていた。
この他国にも前例がない政策は国民の大きな注目と批判を浴びた。そこで大々的な調査が行われた。声の一部を以下に抜粋する。
中学三年男子
「今日初めて女性の裸を見ました。人形だったのですが、腕などは本物の人間のようでした。中学三年になると胸が大きくなると聞いて驚きました。しかも個人差があると。思わず同級生の胸を見てしまいました。」
中学三年女子
「今日は射精の仕組みを勉強しました。精子が通るところを3D映像で見たのですが、一度にあんなにたくさん出るなんて思いませんでした。」
高校一年男子
「エイズは怖いですね。彼女に大丈夫かと聞いたら不安そうな顔をしていました。検査に行けと言ったら泣き出してしまいました。あれからメールの返信がないのでちょっと心配です。」
高校一年女子
「この前から生理が来ないので、不安になって、妊娠検査薬を買ってきました。やってみようかと思ったらちょうど生理が来たのでホッとしました。次の授業で、若いうちは生理はよく乱れると聞きました。そういうことはもっと早く言って欲しかったです。」
高校二年男子
「オレのデートの仕方は結構、良かったみたいだった。ま、オレと一緒にいるんだから楽しくないわけないよな。自分が楽しむのが一番って、父ちゃんも言ってたしな。でもよお、あの授業の後から彼女が口を聞いてくれなくなったんだよ。わけわかんねえよ。」
高校二年女子
「私の彼はいつもベッドに着くとすぐ服を脱いで私を押し倒して挿入するんです。コンドームはちゃんとしてくれます。けど、それが当たり前じゃないんだって今日知りました。いつも痛いって言ってるのに全然聞いてくれないし。普通はそんな風にしないみたいだから、彼とは別れることにします。」
高校三年男子
「僕、実はまだ童貞なんです。他の人はみんな経験してるみたいなこと言っていたので、すごい不安だったんです。けど、高校三年での経験率が15%と聞いて安心しました。ほとんどがラブドール相手だったんです。」